Valentine Dayのおかげで日本のチョコレート業界は毎年潤う。米国はHaloweenの時期に、一番よくチョコレートが売れるのだそうだ。一方でValentineやHaloweenに限らず、常にチョコをこよなく愛する顧客は世界中にたくさんいる。わずか150年ほど前までは貴族階級しか口にすることのできなかった高級品が、奴隷労働を使って大衆にいき渡るほどのカカオを生産したおかげで、先進国の庶民が普通に入手できるようになった。
カカオの最大の産地はコートジボワール(Côted’Ivoir、象牙海岸)、世界の1/3がこのアフリカの国で生産される。他にガーナ、ナイジェリア、カメルーンを加えたアフリカ4カ国で世界の2/3を占める(世界の生産量は450-460万tons)。大手チョコレートメーカーが買い付ける単価は€2.50/kg(約320円/kg)、20-ft container(12.5tons)1本が約400万円という。どうしてこのような安い値段で取引されるか、それは買手が世界の大手企業であり、売手が小さな農園主だから、交渉力が圧倒的に違うためだ。安くしなければ売れないのであれば、安く生産するしかない。
Côte d’Ivoirの隣はMaliというアフリカの中の最貧国のひとつ、ここから11-16才くらいの子どもをCôte d’Ivoirの農園に連れてきて、食事代程度で一日12-14時間ほど働かせる。連れてこられる子供は、甘い言葉につられ、騙されて知らない国に来るのであり、人身売買である。専門の業者が子供を一人連れてくると€230(約3万円、交通費込)の報酬を得る。カカオの原価の大部分を人件費が占めるので、ほぼただの児童労働を使うことによって、集荷業者が320円/kgで大手チョコメーカーに納めることができる。
人身売買も児童労働も国連で禁止されているのに、世界の大手チョコメーカーが児童労働をさせている農園からカカオを仕入れているのは、違法行為を助長していると、2014年9月、米消費者団体は大手チョコメーカー8社を被告として提訴した。その中には、Hershey、Mars、Nestlé、Godivaなど、誰もが知っている世界的ブランドが入っている。奴隷同然の児童労働使っている農園から原料を買い付けることは、企業の社会的責任として許されることではない。ブラックビジネスだ。
米議会は2001年、チョコの箱に「児童労働を使っていません」と記載する義務をメーカー側に強制する法案を通す直前まで行ったが、Hershey、Mars、Nestléなど大手メーカーが議会対策に大金を使い、Harkin-Engel議定書(Harkin上院議員とEngel下院議員の発議による)をチョコレート製造業者協会と締結し、2005年までに「最悪な形態の児童労働」を自主的に根絶すると約束した。しかし、その約束は未だに実現せず、現在、同協会は、2020年までの実現を目指すと悠長なことを言っている。その間、2009年から2014年にかけて、児童労働の数は51%増加したとの統計がある。運よくカカオ農園の奴隷労働から逃れてNPOに保護された児童の数も増え続けており、ブラックチョコレートビジネス根絶のために、先進国の消費者はチョコを食べるのをやめるしかないのではないか。