アミのひとり言

事務所のアイドル犬アミのひとり言です。

Towering Inferno in London

614Londonで発生した24階建て高層住宅(高さ67m、全120戸)の火災は、正に映画そのもの。映画Towering Inferno1974年発表、Londonで火災になった高層住宅も偶然1,974年完成のビルだ。現地時間午前1時に火災発生、当然ほとんどの住民が寝ている時間だ。映画では、地上550m超高層ビル138階建)の81階で火災発生だが、Londonの住宅は4階で火災発生。
 
月曜日現在死亡は79人と発表されているが、行方不明者の数から100人近くまで膨れ上がる可能性がある。負傷者70名以上。火災の原因は、恐らく4階で発生した冷蔵庫からの出火と言われているが、4階の火が瞬く間に最上階まで燃え広がった原因は、昨年改修の際に使用した外壁材にある。外壁材は耐火構造でなければならないところ、この高層住宅に使われていたものは、表面がアルミニウムだが中はポリエチレン。ポリエチレンの詰め物をアルミでサンドイッチにした素材だ。熱がほどほどであればポリエチレンは燃えないが、所詮化学品なので熱には弱い。英国の建築基準法でも18m以上の高層建築には使用禁止の素材だ。
 
実際の火災では、アルミの筒の中を火が上に燃え広がり、瞬く間に最上階まで達した。あたかも薄い煙突のようなシートを高層住宅の側面全面に張り付けたようなもの。しかも、この外壁材の下に張る断熱シート(Celotex RS5000)も熱に弱い化学品で、18m以上の高層建築には使用できない素材だ。
 
市営住宅なのに、なぜ違法建築かと不思議に思うが、所詮、低所得層用の住宅ということで予算をケチっていたからというのが実態のようだ。住民は以前から防火対策が不充分で危険だと指摘してきたけれど、管理団体は予算を限りなく少なくしてきた。まともに作動する火災報知機もなく、スプリンクラーも設置しなかったばかりか、高層ビル用の断熱性外壁材を使わず、入札で一番安い値段を出してきた業者に改修工事をさせたのが、今回の火災の被害を大きくしたのだ。
 
昨年行った改修工事も、1974年の建築業者(Leadbitter)にさせていたら、こんな違法素材を使わなかったところだが、Leadbitterの見積もりが£1,128万(現在の価値で約15.8億円)と高かったので、一番安かった業者(Rydon)の見積もり(£870万、約12.2億円)に惹かれてRydonにさせたという。安物買いの銭失いどころではなく、100人もの命を奪い、多数の負傷者も出し、しかも、着の身着のまま逃れた多数の人たちが、住む場所もなく、すべての財産もなくしたのだから、管理団体の責任はあまりにも重大だ。断熱性外壁材を非断熱性に代えることで£5,000(約70万円)ほどの節約になったと自慢する人間が、管理団体にいること自体が問題だ。各戸にスプリンクラーを設置すると120個で、£13.8万(約1.930万円)もかかるのでやめたというが、必要なものまで自由競争により節約するとは、本末転倒も甚だしい。
 
今回の巨大「人災」を機に、低所得層用の住宅だからと手抜きをするようなことは絶対にやめ、安全確保を第一に予算配分をしてほしいものだ。映画のような光景がテレビに映し出されるのは、恐ろしすぎて観る気にもならないから。