アミのひとり言

事務所のアイドル犬アミのひとり言です。

Universal Basic Income

Universal Basic Income(普遍的基本所得)という制度が世界的に議論されている。生活困窮者だけに国が経済的支援(生活保護費)を与えるのではなく、全国民に基本的な所得を支給する制度だ。日本の生活保護受給者は直近の数字で213万人(164万世帯)、人口1億2,675万人の1.7%に相当する。生活保護費は最低限の生活をするための費用とされているので、要するに、国民全員に生活保護費相当額を基本所得として支給するという考え方だ。
 
 いつも問題になるのが、国民年金40年真面目にかけて65才から受け取る年金は6.5万円。国民年金をかけないで生活保護費を受け取る者の収入の方が高い。生活保護費は自宅を所有していない前提だから、住宅扶助として家賃補助もあり、一人暮らしの場合、全国平均10万円くらいになるだろうが、更に医療費も本人負担がないので、実際の支給額は遥かに国民年金生活者より多い。これが納得いかないという真面目な人の意見だ。
 
 では、生活保護費支給を廃止して、全国民に基本所得として7.5万円支給すると、国庫負担は約108兆円になる。但し、富裕層も含めた全国民に支給するので、その分、国の所得税収入が増えるから、実際の国庫負担額は100兆円以下だろう。ほかに生活保護を支給すべき合理的事由があるか検討する人員も、真面目に求職しているか管理する人員も削減できるから、国全体では2-3兆円くらいの経費節約になるはず。基本所得として受け取った国民が全額消費すれば、国の消費税収入も増える。108兆円が純粋に国家の負担になるわけではない。
 
 FinlandUniversal Basic Incomeの実現に向けて、この1月から、2,000人の生活保護受給者や雇用保険受給者などを対象に、月額€560(約7.3万円)を支給している。求職活動をしているかどうかの確認もせず、2年間支給することにした。半年経過した時点で調査したところ、ストレスから解放され、自主的に求職活動をしている人が多いという結果が出ている。この制度導入前は、怠惰な国民を作るだけで、税金の無駄遣いとも指摘されていたが、現実はそうではないらしい。
 
 Basic Income受給中に仕事を見つけた人は、国からの給付金と働いて得た賃金の合計に対して(課税金額を超えれば)所得税を払えばよい。稼げば稼ぐだけ収入が増えるので、なお更、働く意欲が増すというものだ。Basic Incomeは、市民が国家に依存するのではなく、自立して生活することを促す制度なのだ。とりあえず2,000人で実験して、ゆくゆくは550万人の全国民に対象を増やすという壮大な計画の始まりだ。人口比が23倍の日本で全国民を対象にすると、予算も23倍必要になる。一気には予算の関係で無理でも、徐々に始める価値はあるのではないか。
 
 国民年金40年かけて6.5万円の年金を受け取っている人は、基本的に生活保護費を受け取れない。年金をかけずに生活保護にかかっている人は10万円の保護費を受け取る。これでは正義に反するので、全員7.5万円のBasic Incomeを受け取り、年金をかけた人は更に6.5万円受け取るから14万円の所得を得るというのが正しいやり方だ。日本でもまず10万とか20万人で実験して、いつの日かBasic Income制度を導入すべきだと思う。