アミのひとり言

事務所のアイドル犬アミのひとり言です。

終末期のイタリアマフィア

イタリアには、歴史的に四大マフィアの勢力があったが、どれもボスが逮捕されるに及び、ようやく下火を迎えているようだ。実力No. 1Ndranghetaンドランゲタ)の最高幹部Ernesto Fazzalari(現在47才)は昨年6月、20年間に及ぶ逃亡生活後に逮捕された。No. 2Camorra(カモラ)の最高幹部Michele Zagaria(現在59才)は、201112月、16年に及ぶ逃亡の末逮捕に至った。No. 3Cosa Nostra(コザ・ノストラ)の最高幹部だったSalvatore Riina(現在86才)は逃亡23年後の19931月逮捕、もう一人の最高幹部だったBernando Provenzano(昨年83才で死亡)は40年以上逃亡の末、20064月ついに逮捕に至った。彼らの後を継いで最高幹部になったMatteo Messina Denaro(現在55才)は、今現在は未だ逃走中だが、弟も妹も捕まっており、いずれ捕まるだろうと思われる。No.4Sacra Corona Unita(サクラ・コロナ・ウニタ)の最高幹部Salvatore Lo Piccolo(現在75才)は、24年間逃亡の末、200711月ついに逮捕された。つまり、どのマフィアも親分がいないか逃亡中なのだ。
 
マフィアの支配は忠誠心、暴力による恐怖政治だ。恩には恩を、復讐には復讐をもってお返しするのがマフィアの流儀で、捕まっても組織内部の情報は絶対にはかない。ところが、過酷な捜査に耐えられず、一部、掟に反してしゃべる者がおり、特に幹部クラスの持っている情報は、警察にとり、この上なく貴重な内部情報だ。警察はこれらの情報を生かして、一度で数十人から数百人のメンバーを逮捕してきた。19842月には476人が一斉に逮捕され、20151月には最大組織Ndranghetaのメンバー140人以上が逮捕されている。マフィアは麻薬密売、タバコ、売春、公共工事への介入から地元のスーパーマーケットの経営などその活動は多岐にわたり、地元シチリアでは巨大な経済力を持っている。
 
幹部たちは、文字通り地下5メートル以下の地下室で暮らしており、地上に出るのはかなり危険だ。しかし、幹部の子どもたちまでずっと地下室で生活させるわけにいかない。また、両親共に刑務所に収容されたマフィアの子どもたちは行き場すらない。マフィア組織を根こそぎ壊滅させつつあるイタリアで、祖父、父、叔父などが皆刑務所に行ってしまい、後に残った子どもたちをだれが面倒見るのかという社会問題が起こった。そこで、心理学者Enrico Interdonato33才)などが中心になって、Liberi di scegliere(選択の自由)というvolunteer運動がおこった。子どもたちは、父親などから、自分の跡継ぎになることを期待されて育てられてきた。それらの子どもたちを引き取り、別の土地で里親に育てさせ、父親らが憎んできたマフィアの敵がどのような人たちかを知ってもらい、子どもたちに、将来マフィアの跡継ぎになるか別の道を行くか、自由に選択させるという運動なのだそうだ。
 
父親を憎む必要はないが、自分の将来は、自分で選ぶよう社会が教える運動らしい。未成年者が学業を終える機会を与えられ、18才になると、職探しの援助も受けられる。これらの子どもたちが将来定職を持ち、やがて出所するであろう父親を養い、マフィアのない国を作ろうという壮大な計画が始まったところだ。