日本で死刑になる罪は殺人と決まっており、遺族は犯人に対して最高の刑罰を与えてほしいと願うものだ。しかし婦女監禁暴行事件となると、犯人に刑罰を望むのは遺族ではなく、被害者本人となる。今年5月米国Ohio州Clevelandで発覚した女性3人誘拐監禁事件の犯人Ariel Castro(53才)は、9-11年の長期に渡ってこれら女性を自宅に監禁し、誘拐・暴行・強姦・堕胎(少なくとも5回、妊娠した子供を殴って流産させた)など937件の罪により、仮釈放なし無期懲役、禁錮1,000年(強制労働つき)、自宅没収、罰金10万ドル(約1,000万円)を言い渡された。被告は死刑求刑を恐れ司法取引に応じたため、死刑は免れたが、逆に被害者の1人Michelle Knightさん(誘拐当時21才、現在32才)は、死刑ではCastro被告にあまりにも優しすぎるという。
元々バスの運転手をしていた男はDV(家庭内暴力)により妻に逃げられ、1996年には4人の子供(息子と3人の娘)も父親の家を出て一人暮らしになった。子どもたちは、自分の母親が、男にゴミのように踏みつけられる姿を何度も目にしたという。男は2002年8月、21才の女性Michelleさんを、帰り道が同じだから家に送ってあげると甘い言葉で誘い、自動車に乗せ、そのまま自宅に監禁した。翌2003年4月、娘の小学校からの友だちの16才の女子高生Amanda Berry(バーガーキングのアルバイトの帰り)にEmily(男の次女)のパパが家まで送ってあげると車に乗せ、監禁場所に直行。更にその翌2004年4月、学校帰りの14才の女子中学生Gina DeJesusにArlene(男の三女でGinaの親友)のパパが家まで送ってあげると車に乗せ、こうして2年間に3人の女性を次々に誘拐したのだ。
11年も地獄で生きることを強制されたMichelleさん(現在32才)は、裁判で、この極悪犯が電気椅子で一度だけ恐ろしい思いをして即死するのは、自分が被った苦痛に比してあまりにも軽すぎると主張した。男には自分以上の苦しみを地獄で味わわせてやらなければならないというから、禁錮1,000年(強制労働つき)の判決を歓迎している。禁錮1,000年では、満期出所は絶対にあり得ないわけで、要するに死後も1,000年経たなければ罪を償ったことにならないと、極悪犯を諭す程度の意味だろう。禁錮1,000年が長すぎると思うのは日本人だけのようで、米国の裁判官は強姦罪に対して非常に厳しい。Oklahoma州の裁判所は1993年、Allan McLaurinという男に連続強姦の罪で禁錮21,250年の判決を下し、翌1994年Charles Robinsonに連続未成年者強姦の罪で禁錮30,000年の判決を下している。死刑以上に重い刑のつもりだ。
これに反して日本の刑罰は大変生ぬるい。2000年発覚した新潟監禁事件(被害者の小学4年女児は1990年誘拐され、9年2ヶ月の間、男に監禁されていた)、2001-2005年にかけて発生した監禁王子事件(4人の女性が合計116日間男に監禁された)の犯人はどちらも懲役14年の判決。新潟の男(逮捕時37才)は来年51才で満期出所、めでたく全ての罪を償ったことになるが、これでは被害者が浮かばれない。せめて懲役114年位にして、38年(1/3)経過後仮釈放の可能性あり程度に刑法改正すべきではないか。
(Ariel Castroは現地時間9月3日夜、獄中で首つり自殺していたところを発見された。)