Black Death（黒死病、ペストの意味）という犯罪集団による人身売買が、不思議なことから摘発された。先月イギリスのモデルChloe Ayling（クロエ アイリン、20才）が、報酬£600（約8.5万円）でイタリアにおける写真撮影の仕事に応じ、ミラノに着いたところ、Black Deathの一味であるPoland国籍のLukasz Herba（ウカシュ ヘルバ、30才、英国在住）らに拉致され、Torino郊外の農家に連れていかれて、6日間そこで監禁された。
彼女は、7月11日朝、ロンドン南部の自宅を出てイタリア・ミラノに着き、写真撮影事務所の迎えが来ていると思ったら、二人組の誘拐犯が待っていたのだった。すぐさま背後の男が一方の手で首、もう一方の手で口を抑え込み、目出し帽の別の男が彼女の右腕に麻酔薬ketamine（ケタミン）の注射をした。意識を失った彼女は、その後、大きな袋に入れられ、自動車のトランクでTorino近郊、フランス国境までわずかのBorgialまで運ばれたという。
Black Deathは、爆破、麻薬取引、人身売買、誘拐、武器売買など非合法の活動をしている犯罪組織だ。組織の詳細は不明だが、今回のモデル誘拐を引き起こした責任者は、ルーマニアにいるらしい。インターネットのDark Web（特殊なbrowserでしかaccessできないサイバー空間）で誘拐した人間を競り（auction）にかけて売り払う。このモデルは当初€30万（約4,000万円）の値段が付けられていたが、イギリスの彼女の事務所にも身代金を要求したところ、20才のモデルには2才の男の子がいることが判明し、ヤクザの掟で、若い母親は誘拐の対象にしないことになっており、6日後の7月17日、誘拐犯Herbaが在ミラノ英国領事館に彼女を引き渡しに来たところを逮捕された。
彼女は6日間監禁されていた間、アラブの大富豪に売り飛ばされるときかされていたそうだ。大富豪が彼女に飽きたら虎のエサになるときかされてもいたから、監禁されていた間、彼女は生きた心地がしなかったに違いない。もちろん脱出防止のため、手錠足錠を付けられ、身動きはとれない。Herbaのボスは、このようなDark Web上の人身売買で、過去5年間で£1,100万（15.7億円）稼いだと豪語していた由。しかし、このヤクザは、20才のモデルに2才の子供がいるとは思わずに誘拐してしまったそうで、ヤクザの内規に反した行動をとると自分の身がやばいから、Auctionを途中で中止し、英国人モデルをミラノの英国領事館に届けることになったのだそうだ。
内規に律儀なヤクザが、かくしてイタリアの警察に逮捕され、あまり知られていなかったBlack Deathの全貌が少しずつ明らかになりつつある。裁判はミラノで行われており、実行犯の兄Mikal Herba（36才、英国で弟と二人同居していた）も近々裁判に証人として出頭する。この犯罪組織は、人身売買のAuctionで得た金額をBitCoinに換算して受け取る。これだと銀行口座から足がつくことがない。Black Deathは今回英国人モデルを解放したことで、モデルの所属している事務所に$5万（約550万円）の実費を1か月以内にBitCoinで支払えと要求している。北朝鮮の若造のような集団がヨーロッパでも活躍しているようで、うかつにモデルのアルバイトもできない。
