アミのひとり言

事務所のアイドル犬アミのひとり言です。

乳児尊厳死(安楽死)

英国で生後11か月の男の子の安楽死尊厳死)を巡って様々な意見が出され、とても難しい問題だと知らされた。男の子は20168月誕生、先天性ミトコンドリアDNA枯渇症候群という難病により、生命維持装置をつけて生きている。この病気は、細胞が正常に機能しないため内臓や筋肉の形成が難しく、しかも、彼は脳にも深刻な損傷を負っていて、地元の病院は回復の見込みがないことから両親(31才と32才)に生命維持装置を外して安楽死を受け入れるように提案した。
 
病院が裁判所に安楽死の許可を申請したのを受けて、欧州人権裁判所は先月、治療継続は「更なる苦しみを与える」として安楽死肉体的激痛を除去するための切迫した状況下での生命短縮を認める決定をした。ところが男の子の両親は治療継続を強く希望し、米国で治療できるという医師まで見つけ、治療費や渡航費を賄うためインターネットで寄付を募ったところ130万ポンド1.9億円)以上の寄付を集めたという。同時に、この話をききつけたヴァチカンのローマ法王も、最後まで子どもの命を守るべきだと主張して、ヴァチカンが運営するローマの小児病院が受け入れると表明した。
 
誠にお気の毒だが、最善を尽くして一つの命を救ったところで、終生完治の見込みのない人間を一人救う費用で、数万人の子どもたちを救うことができる経済効果と比較すれば、彼の両親の希望をかなえてあげるのが正しいのか判断に迷うところだ。英国政府は、英国の病院でやるべきことはすべてやったとして、更なる治療のために国外渡航することを認めていない。
 
世界で安楽死を認めている国はスイス、オランダ、ベルギー、ルクセンブルグ、カナダ、ドイツ、コロンビアと一部の州で認められる米国だけ、英国は安楽死が認められていないので、個別の裁判所の判断を必要とする。昨年10月、英国で末期症状の女性Jean Davies86才、元数学教師)は安楽死尊厳死)を求めていたが、英国では実現しないので、餓死による自殺を選択した。スイスに行けば合法的に尊厳死が認められるところ、自宅で子ども・孫たちに看取られて亡くなることができなくなるし、薬の過剰摂取で死ぬ方法も考えたが、万が一うまくいかなかった場合のことを考えてそれはやめたのだそうだ。
 
Jean Daviesんの場合、昨年828日、人生最後の食事として自分で焼いた小さなケーキを娘と一緒に食べた後、一切食事をせず、最後は水も飲まずに101日、自宅で死亡したという。絶食して9日目(94日)に日本の新聞記者が彼女の自宅を訪問して、本人にインタビューしている。水しか飲まず絶食して9日にもなると、力が入らずソファから立ち上がるのがとても辛そうだったとの印象。最後には水を飲むこともやめたところ、絶食開始から丁度5週間で亡くなった。水を飲むのをやめると、口が乾いてしゃべりにくくなるそうだ。
 
11か月の男の子は自分で判断することができない。しかし、息が途絶えるまで苦痛に耐えなさいと試練を課すのが正しい判断なのか、宗教でも解決できない問題ではなかろうか。