アミのひとり言

事務所のアイドル犬アミのひとり言です。

シリア国民の悲劇

アラブの春といわれるシリア情勢がますます凄惨な状況になってきた。人口2,200万の中東の国に君臨する二世独裁者は45才のBashar al-Assad。一見紳士風に見えるが1970年クーデターでこの国を乗っ取った父親に劣らず冷酷な男だ。デモで負傷した者が手当てを受けようと入院すると最後、政府軍兵士に拷問され虐殺されて、政権側の医者から普通の死亡診断書を受け取るだけだ。自分も拷問を受けたという英国の新聞記者が命からがら国外追放になって帰国し現地で見聞きした拷問の実態を報告している。アサドは親子二代に渡って反体制派を弾圧・殺害してきたから自分が捕まったらリビアカダフィのように自国民に虐殺されると知っていて、今更弾圧をやめられないのだろう。2月に始まった反体制デモから9ヵ月、一説には4,000-5,000人の平和的デモ参加者が政府軍に殺害されているという。病院で亡くなった人の数は一切公表されないから被害者は1万人を超えるのだろう。政府軍の内部からもかなりの部分が反政府側に寝返ったが、アサド側は脱走兵と見るや即殺害しているとの報告もある。反政府側武装兵と政府側兵士との戦いで最近は政府側により甚大な被害が出ているとも言われている。隣国レバノンは反シリアの感情が強くシリアの反政府側に武器を供給して密かに援助している。シリア政府側にとって、反政府勢力がかなりの脅威になっていると思われ、アサド側はつい最近シリア・レバノン国境のシリア領内に地雷を敷き詰めて武器の供給を止めようとしているとの情報がある。シリア国民をアサドの暴力から保護するため米欧などが国連安保理決議を求めたところ案の定中露が拒否権を行使して実現しなかった(リビアの場合中露は棄権しただけ)。中露はシリアにおける自国の権益を確保する方がシリア国民を保護することより重要と判断したのだ。その中国がアサド政権の終焉を予想してか10月末シリアに特使を派遣して、「人民の正当な願望は尊重しなければならない」とアサド政権の暴力の停止を訴えたから、アサドの蛮行を黙認している大国はロシアのみになった。しかし中東においても民主化の動きは前進するのみで更に犠牲は増えるだろうがシリア国民にもいずれ春が来ると信じたい。そして春を迎えた中東からは中露はやがてはじき出されるだろう。リビア新政府はカダフィの側についた中露に石油権益の供与も武器の注文もするはずがないからだ。