アミのひとり言

事務所のアイドル犬アミのひとり言です。

日本人女性ジャーナリストの死

イメージ 1
シリアの独裁者大統領アサド(Bashar al-Assad)は昨年3月から自由を求める自国民虐殺を続け、人権団体が確認しただけで既に23,000人以上を殺害している。(いわゆる「行方不明者」はこの数字に含まれていない) 自国政府がどのような非人道的殺戮をしているか知られるとまずいので外国人ジャーナリストは原則入国禁止としている。しかし真実を伝えようとする外国人記者は隣国から陸路入国するも、政府軍関係者により殺害される。

20日にトルコから陸路シリア第二の都市Aleppoに入った日本人ジャーナリスト山本美香さん(2008年から早稲田大大学院非常勤講師、45才)も日帰りのつもりで反体制武装組織「自由シリア軍(Free Syrian Army)」についてAleppo入りしたが、運悪くアサド政権を支持する民兵集団に首など数か所を撃たれ死亡した。今年に入ってシリアでアサド側兵士に殺された外国人ジャーナリストはこれで4人になる。同じ20日、米国Virginia州Springfieldを本拠地とするテレビ局のパレスチナ人ジャーナリスト(Bashar Fahmi)とそのカメラマン(Cuneyt Unal)二人が政府軍に連行され「行方不明」と伝えられている。

アサド政権にとって有害な報道をするシリア人記者は外国人記者と同じく政府軍により徹底的に殺害されている。22日、自宅にいるところをアサド部隊の襲撃を受け至近距離から撃たれて死亡した国営紙のMosaab al-Odaallah記者は、インターネット上に偽名で政府軍の弾圧についての記事を公開していたという。アサド側による反体制派への攻撃で死亡したシリア人記者・ジャーナリストはこれで既に54人になる。(シリアのジャーナリストでつくる地下組織情報) 同地下組織の代表は、政府軍は記者やジャーナリストで情報を発信する活動家は徹底的に殺害する方針をとっていると話している。日本人ジャーナリストが殺害されたことにより日本の警視庁は刑法§3-2(国外犯)を根拠に犯人捜査を開始するとしているが、現シリア政府が主導して行っている犯罪に対して、国際刑事警察機構ICPO)といえどもシリアの捜査機関と連携して犯人を特定するなど期待できるものではない。

ジャーナリストは国民の知る権利を確保し、国民が正確な現状認識を経て正しい判断ができるよう情報提供してくれる職業であるから、その取材・報道の自由を尊重し、どちらの側もジャーナリストは標的にしないという国際的暗黙の合意がある。にもかかわらず敵側に有利な報道をする報道関係者は世界各地で標的にされ犠牲になってきた。「紛争の現場で何が起きているのか報道することで社会を変えることができる。そしてその国の状況が少しでも良くなればいい。世界のどこかで戦争があり、そこでは無辜の市民が命を落としている。何か解決策はないだろうかと私は常に考える。世界の安全はひいては日本の安全につながる。テレビ視聴率ばかりを重視せず、人道的見地から忘れられがちな問題を掘り起こしていくことはメディアの責務であると思う。」優れた国際報道に贈られるボーン・上田賞特別賞を受賞した山本美香さんの早稲田大大学院における最後の講義での発言だそうだ。

例によってアサド政権側は、山本さんを撃ったのは政府軍ではなく反体制派の武装集団だと主張している。「自分の利益が第一」と言うべきところ「国民の生活が第一」とうそぶく我国の有害無責任政治屋も本質はAssadと大して変わらない。(日本で司法解剖の結果、山本さんの遺体には、銃弾が撃ち込まれた痕が全身に9カ所あることが分かった。)