アミのひとり言

事務所のアイドル犬アミのひとり言です。

両足義足の走者Blade Runner

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オリンピックが終わると同じ会場で今度はパラリンピックが始まる。障碍者スポーツの祭典だが、健常者といえどもパラリンピック金メダリストより速く走れる人はあまりいない。昨日始まったLondon Paralympics注目の選手は南アフリカのOscar Pistorius、25才。先天的にすねの骨がなく、生後11カ月で両膝から下の切断手術を受けた。2004年アテネParalympics、17才にして200m=21秒97で金メダル、しかもその種目はT44といって「片下腿切断」クラスだから、決勝戦に出た他の7名は全員片足義足。Oscarのみ両足義足だ。彼が参加すべきT43(両下腿切断)の参加選手が少なかったためT44(片下腿切断)クラスで出たのだそうだ。常識的には、片足だけでも自分の本物の足がある方が両方義足より圧倒的に有利だと思うがOscarは片足義足の誰よりも速かったのだ。2008年北京ParalympicsでOscarはT44クラス100m, 200m, 400m全てで金メダルを独占した、世界記録保持者でもある。

世界最速の健常者は言わずもがなUsain Bolt, 100m=9秒58、対する両下腿義足のOscarは100m=10秒91。Oscarの400m自己最高記録は45秒07。驚くべき記録だ。London Paralympicsでは9月7日T44クラス100m決勝戦が行われる。200m, 400mには絶対的自信を持つOscarの金メダルは安泰だと思われるが、100mでは手ごわい敵がいるという。両方自分の足でありながら生涯100m=15秒以下で走ったことのない僕にとって嘘のような記録だ。
(*London Paralympics T43=両下腿切断=400mでOscarは圧倒的強さで金メダル、記録は自己最高に及ばないもののParalympics記録46秒68)

このOscarが先般のLondon Olympicsにも南アフリカ代表として出場したというから二重の驚きだ。400mでは健常者を相手に準決勝に進み、4人の代表選手の一人として出場した4x400リレーでは決勝にまで進出している。(もちろん障碍者は彼ただ一人) こういう超人的な選手がLondon Paralympicsを一層魅力的にしてくれる。

1992年Barcelona ParalympicsでT42(片大腿切断)クラス100m決勝戦を見た時のことだ。金メダルの選手は義足の足は支えにしか使っておらず、もう片方の足だけで蹴っているのに11秒くらいで走ったと思う。自分の目を疑った。本当に人間の能力に限界というものがないのだろうか。ハンディをハンディとしない強靭な魂はどこから出てくるのだろう。どんな練習をしているのだろう。もし本物の足ならどんな記録を出すのだろう。彼らは、我々がどんな苦境に追い込まれようが地道に努力すればそこから這い上がることができると教えてくれているような気がする。(Oscarのニックネーム「Blade Runner」は映画の題名からきている)