アミのひとり言

事務所のアイドル犬アミのひとり言です。

オーストリア女子ロードレース金メダルは数学者

 オリンピックには常に番狂わせがあるもので、取れるはずのメダルを逃したという選手は各国にいる。女子自転車のロードレースは、過去2回続けてオランダの選手が金メダルを取っており、もともと、今回の東京には、オランダから4人の選手が出場したが、そのうち誰が金メダルを取っても不思議ではないという実力者ばかり。事前の予想では、オランダの選手が金・銀・銅を独占するだろうとの記事が目立った。40か国67名の参加者の中で、1位から4位まですべてオランダが独占しても不思議ではないという感じだったのだ。

 

 オランダは、なぜか、圧倒的に女子ロードレースに強い。2012年London OlympicsはMarianne Vos選手(現在34才)が金メダル、2016年Rio OlympicsはAnna van der Breggen選手(現在31才)が金メダルを取っており、東京には、この二人の金メダリストの他に、前世界チャンピョンAnnemiek van Vleuten選手(38才)と新鋭のヨーロッパチャンピョンDemi Vollering選手(24才)の合計4名が東京オリンピック女子自転車ロードレースに出場した。(結果はvan Vleuten選手2位, Vos選手5位, van der Breggen選手15位, Vollering選手25位)

 

 大会3日目の7月25日、東京を出発して山中湖、冨士スピードウエイなどを回る全長147kmのコースを午後1時に出発して約4時間、平均時速37~38kmで走るのだから、日本の高温多湿の気候に慣れていない選手にとっては、午後1時~5時の最も強い日差しの中(気温33℃)、標高差2,692mの過酷なコースは地獄の道と変わらない。オランダは夏でもそんなに暑くならないから、オランダの選手は全員、予想以上の苦しい戦いだったに違いない。他国の選手も、皆、完走するのが精いっぱい(途中脱落は3名)。そんな中で2位・銀メダルを獲得したのがオランダvan Vleuten選手(38才)、3位・銅メダルはイタリアのElisa Longo Borghini選手(29才、Rio Olympic銅メダルに続き2回目)。そして金メダルに輝くのは、オーストリアのほぼ無名のAnna Kiesenhofer選手(キーセンホーファー、30才)。オランダチームにとって、この選手はノーマークだったという。

 

 通常、この手のサイクリストは、どこかのワールドチームに所属して訓練を受けるのだが、Kiesenhofer選手は、どのチームにも属さず、コーチもいない。基本的に国内の試合にしか出たことがなかったのだけれど、昨年初めて世界選手権に出場、完走はしたものの、優勝したオランダのvan der Breggen選手(Rio Olympic金メダリスト)に約12分遅れて、順位は44位。今回はオーストリアからただ一人参加、25位以内のフィニッシュを目標にしていたという。

 

 実はこの選手、英国ケンブリッジ大学修士、スペインBarcelonaの大学で博士号を取った数学の学者で、現在スイス・ローザンヌ大学で数学を教えている。他の選手が高温多湿の気候の中で実力を発揮できないでいるところ、気象・栄養・体力の配分など、学問で得た知識をフル活用して、自分が自分のコーチになり、試合運びを組み立てたのだという。今のところオーストリアが獲得した金メダルはこの一つだけ、自転車ロードレースでオーストリアがメダルを獲得したのは1896年以来125年ぶりの快挙だという。日ごろの訓練と数学の賜物なのだそうだ。