アミのひとり言

事務所のアイドル犬アミのひとり言です。

出し子を無罪とする理不尽な判決に控訴

福岡県大野城市の女性(85才)宅に、昨年、ヤマシタと名乗る人物が、「ロト6が当たる特別抽選に参加できる」と電話し、現金150万円を騙し取ろうとした事件が発生した。不審に思った女性が東京に住む息子に相談したところ、詐欺だとわかり、警察に通報した。福岡県警は騙されたふりをして捜査に協力してほしいと女性に依頼し、次にヤマシタから電話あった時、女性は「120万円だけ工面できた」と伝え、ヤマシタの指定する大阪市のマンションに、現金の代わりに不要の本を詰めた箱を発送した。兵庫県尼崎市の男(35才)が、知人から紹介された別の人物の指示を受け、荷物を受け取るため325日に当該マンョンの空き部屋に赴き、配送業者を装った警察官から荷物を受け取ったところを現行犯逮捕され、起訴された。
 
 福岡地裁912日に出したこの事件の判決は「被告男性を無罪にする」というもの。判決で、被告が以前から5,000円~1万円の報酬で荷物を数回受け取っていたことから、裁判官も「何らかの犯罪行為に加担し、詐欺かもしれないという認識はあったと推認される」と指摘しておきながら、男が受取の依頼を受けたのは、ヤマシタが女性に電話した後で、男とヤマシタには詐欺行為について事前の共謀があったと認定できないので、男を有罪にできないという理屈だ。確かに、男が事件に関与した時点は、女性が被害に気付いて警察の「騙されたふり作戦」に協力し始めた後だったから、事前の共謀がなかったとも言えるが、この手の特殊詐欺事件の現金受取役が具体的に決まる時点が、ヤマシタが電話する前と後で、有罪と無罪に区分することが社会通念上合理的であろうか。

ヤマシタは、うまく女性を騙せそうだと思ったら、荷物(現金)の引き取り場所を指定し、その後、近くの受取役を指名するわけで、ヤマシタと受取役は常に「事前の共謀がない」状態にある。福岡地検は判決に納得いかないと、23日控訴した。我が国では、おとり捜査(stingoperation)全般を合法とはしないが、薬物事案など一部の犯罪にはおとり捜査を認めている。これだけ大きな社会問題になっている特殊詐欺についても、広くおとり捜査を認めるべきだろう。


騙されたふり作戦は、おとり捜査の中でも「機会提供型」(元々犯意を有している者に対して、その犯意が現実化・対外的行動化する機会を与えるだけの働きかけを行った結果、犯行に及んだケース)については、社会の犯罪抑止の観点から、合法化すべきだ。被告の男はこの事件の前にも数回同様の「アルバイト」をしたことがあり、報酬に目がくらんで犯罪の一翼を担うのを厭わないやつなのだ。指示役から「120万円の現金の入った箱を引き取りに行け」と指示されなくても、箱を受け取るだけで数万円の報酬が得られる仕事がどんなものか、普通の人間にはわかるはずだ。

裁判官は、女性が途中から詐欺に気づいているので、詐欺行為が既遂に発展する危険性がなくなっており、詐欺罪が成立しないというが、それなら詐欺未遂罪でも処罰できるのではないか。こんな男を社会で自由にさせていたら、詐欺と気づかない別の被害者が次から次に現れてくることになる。せっかく警察が捕まえた「犯人」を無罪放免するのは甘すぎるだろう。警察もようやく苦労して「犯人」を捕まえたものの、犯罪の構成要件に合致しないから無罪では働く気にならないだろう。