アミのひとり言

事務所のアイドル犬アミのひとり言です。

46年前の殺人犯逮捕の新技術

 先月、アメリカで1975年12月5日に発生した19歳の女性強姦殺人事件の犯人が、46年経ってようやく逮捕された。当時、DNAは犯人捜査に利用されていない時代だったが、1997年になって、証拠品のDNAの鑑定が行われ、FBIのDNA Databaseと照合されたが、それでも手がかりは得られなかった。被害者の名をつけてLindy Sue Biechler(ビ-クラー)殺人事件といわれる。

 

 46年前、Pennsylvania州Lancaster郡Manor Townshipのアパートの一室で、住人のLindy(当時19才、一人暮らし)が強姦されたうえ、刃物で19か所も刺され、首に刃物が突き刺さった状態で死んでいるのが、訪ねてきた叔父と叔母により発見された。未解決事件はcold case(冷蔵事件?)と呼ばれ、46年前のcold caseはLancaster郡では最も古い事件だったという。

 

 2019年、地方検事局のCold Case班がこの事件の捜査に着手した。Parabon NanoLabsという遺伝子解析を行う会社のMs. CeCe Moorが、DNAを基に遺伝子家系図を作成、見つかった血縁者と犯人の共通の祖先から家系を辿る方法だが、民間の家系図作成サイトで一致する先祖は、300年以上前に遡る遠縁の人たちだけだった。が、この人たちをよく調べてみると、皆、イタリア南部Calabria州の小さな町Gasperinaというところにルーツを持つという共通項が判明した。当時、GasperinaからLancaster郡に多くの移民が来たはずとの前提で、出入国記録や地域の資料を調べたところ、現在Lancaster郡にイタリア系移民が2,300人ほど住んでいることが判明。

 

 イタリア系移民の可能性大ということで、2,300人を調べるが、そのうち50%は女性で対象外、男性でも当時の子どもは対象外として、まずは当時20代の男性にしぼって調べると、被害者と同じ建物に住んでいたことがある男(David Sinapoli、当時22才)が捜査線上に浮上した。この情報を基に、捜査当局はSinapoli(68才)を監視下に置き追跡していたところ、男が妻(Marina)同伴で旅行に出かけるためPhiladelphiaの空港に行き、そこで飲んだコーヒーのカップを捨てたゴミ箱からカップを拾いDNAを調べた結果、犯人のDNAと一致、先月、逮捕に至ったという。

 

 男は1974年2月、高校の同級生だったDebraと結婚して、被害者女性が住んでいたアパート(4軒並び)に住んでいたが、1975年8月頃、別のアパートに引っ越していて、その年の12月に事件は発生した。1987年に離婚したDebraは、自分の元夫があの悪名高いLyndy事件殺人犯ときいてびっくり、犯人の当時の妻として警察の取り調べも受けたというが、本当に何も知らなかったそうだ。その後、殺人犯はMarinaと再婚し、子も孫もいるが、何食わぬ顔をして善良な市民を装って生活し、職場の仲間にも親切なnice guyとして知られており、皆騙されていたのだった。(通常は、捕まるまで犯罪を続けるから、もっと早く捕まるのだが、途中から善人気どりされると捜査当局泣かせだ。)