アミのひとり言

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神戸5人殺傷事件犯人-無罪確定

 2017年7月16日発生した神戸北区の殺傷事件、3人死亡2人重傷の大事件だが、当時26才の犯人は発狂していたとみなされ、刑法第39条により無罪と確定した。検察は、犯人が発狂していた訳ではなく、単に善悪を判断し行動を制御する能力が、著しく低下していただけとして、無期懲役を要求していた。

 

 犯人は、家にいた祖父母(共に当時83才)を金属バットで殴打した後、包丁で何度も刺して二人を殺した。それを止めようとした母親(当時52才)も金属バットで殴打されたがかろうじて家から逃げ出すことができ、命は助かった。その後、近所を散歩していた女性二人(共に当時65才)も包丁で襲われ、1人死亡、1人重傷。合計3人死亡、2人負傷となった事件だ。

 

 3人も殺して無罪とは如何に?刑法第39条によれば、「1 心神喪失者の行為は、罰しない。」とあり、「2 心神耗弱(コウジャク)者の行為は、その刑を減軽する。」とある。心神喪失者とは、是非弁別能力又は行為制御能力のどちらか一方でも欠く者、精神の障害等により、自分の行為が違法であることを理解できない、又は、違法と分かってはいても、自分の行為を制御する能力がない者であり、責任能力がない者(責任無能力者)だから責任を問えない、従い何をやっても刑法上は無罪となる。一方、心神耗弱者とは、精神が衰弱して善悪を判断し行動を制御する能力が著しく劣っている者(能力がゼロではない、限定責任能力者)なので、責任を追及することはできる。但し、刑罰において、通常の者よりも軽い刑罰を科さなければならないというだけ。

 

 今回の犯人は、自分と元同級生の女性以外の人間は、姿は人間だが自我や感情がない存在「哲学的ゾンビ」であり、女性と結婚するためには「哲学的ゾンビ」を倒さなければならないという妄想・幻聴に拠る影響で犯行に及んだと認定されている。「妄想を信じ切っていたか、妄想を払拭し犯行を思いとどまれる状態ではなかった可能性が高く、心神喪失だった合理的疑いが残る」(神戸地裁判決)「自分と女性以外が『哲学的ゾンビ』だと確信し、その妄想の圧倒的な影響下で犯行に及んだ疑いを払拭できない」(大阪高裁判決)として、犯人が心神喪失者だったから、無罪とした。

 

 上告期限の本日、検察が最高裁に上告を断念したことで、犯人の無罪が確定した。殺された祖父母はともかく、「無罪」で納得できないのは、殺された散歩中の女性の遺族と重傷を負ったもう一人の散歩中の女性だろう。この男を隔離しておかなければ、また被害者が出てきてもおかしくはない。26年間心神喪失状態で生きていた訳でもない男が、一瞬にして心神喪失になったというのは、果たして現実にあり得る話なのだろうか。精神鑑定に疑念が生じる。