アミのひとり言

事務所のアイドル犬アミのひとり言です。

コロンビア大統領にノーベル平和賞

 中南米コーヒーの楽園コロンビアの大統領が今年のノーベル平和賞を受賞した。僕が高校一年生になった1964年以来、コロンビアではFARC(Fuerzas Armadas Revolucionarias de Colombia、コロンビア武力革命団)という武装勢力が同国政府に次ぐ第二の勢力並の力をもって支配してきた。もともとは大土地所有制度に反対する農民の武装集団だったが、ブルジョワ支配層のみを代表する議会・政府に対して力で対抗せざるを得ないので、理論武装も必要となり、キューバ革命1959年)に刺激を受けた左翼ゲリラの合流もあって、現在の共産主義武装集団FARCに至っている。
 
FARCは、資金的には、コカイン栽培・取引などの収益で高性能の武器を購入し、2000年頃には2万人程の戦闘員を誇り、国家の1/3程を支配していた。要人誘拐による身代金なども収入源で、19918月に発生した東芝の日本人技術者2名の誘拐事件(同年12月解放)も、20012月発生の矢崎総業現法副社長誘拐事件(200311月殺害)もFARCの仕業だ。1964年から52年経つが、その間の死者22万人以上、国内避難民600万人以上と言われている。FARCが仕掛けた地雷は中南米最大規模で、過去25年で11,000人以上の死傷者を出している。
 
 今回ノーベル平和賞を受賞したJuan Manuel Santos大統領(65才)は、歴代大統領が成し得なかったFARCとの和平実現を政策目標に掲げ2014年再選された(任期は2018年までの8年)。まずはFARC幹部を殺害して組織に大きな打撃を与えつつ、2012年頃からFARC最高幹部Timochenco司令官(57NorwayOsloで和平交渉を始めた。ノーベル賞選考委員会は4年前からSantos大統領の和平交渉を見守ってきたことになる。そして昨年9月ようやく大筋合意にいたり、本年6月、Cubaの首都HabanaでついにFARCとコロンビア政府軍の永久停戦が実現した。両者の和平合意保証国はNorwayCubaだ。NorwayCubaは両者に敵対状況の緩和を強く要請した。
 
両者の合意内容は主に5点:農地改革(農地の分配とコカイン転作)、FARC の政治参加(今後2回の国政選挙でFARC10議席を割り当てる)、非合法麻薬生産・取引からの撤退、地雷の共同撤去作業、それに武力抗争被害者への賠償(補償)である。和平特別法案はコロンビア議会でも承認され、102日の国民投票で最終決着がつく予定だったが、なんと49.850.2で否決されてしまった。107日発表となったノーベル平和賞は、この国民投票の結果を予測していなかったとは思うが、再度国民投票を実施してどうしても今回の和平を実現して欲しいという和平合意保証国Norwayの意思表示だと思う。
 
ÁlvaroUribe前大統領(彼の父親は1983FARCに殺害されている)などは今回の和平合意反対派で、ゲリラの幹部が国会議員として活躍するのを認めることはできない、元非合法活動の幹部の刑の減免はもってのほかと反対している。しかし、平和が実現すれば外国からの投資も増え、観光客も増えて経済が活性化し、国家の発展に寄与するので、条件を少し変更して再度の国民投票をすることになるだろう。Santos大統領ノーベル賞の賞金約1億円を内戦犠牲者の補償に全額充当すると国民に約束した。絶対にコロンビアの平和を実現してもらいたいものだ。