アミのひとり言

事務所のアイドル犬アミのひとり言です。

76才九段vs. 14才四段

将棋の世界で地殻変動が起こっている。この10月、中学2年生の14藤井聡太四段が、昨日、プロになって初の公式戦で、将棋界の天皇加藤一二三(ヒフミ)九段(現役最年長、76才)と対決、10時間43分に及ぶ大接戦で62才年上の大先輩を負かした。加藤九段といえば、昭和29年(1954年)147カ月でプロ入りした最年少記録保持者だった。つい最近、142か月でプロ入りした藤井聡太四段に記録を破られるまで、62年間、この記録は誰も破ることができなかったという。
 
加藤一二三がプロになった中学2年生の時も四段、彼はその後毎年昇段して18才で八段になったというから、ただものではないことがわかる。18才で八段という記録はまだ誰にも破られていない。4年後に藤井四段がこの記録も塗り替えるのかもしれない。
 
将棋は頭脳戦だから、76才、百戦錬磨の名人(「神武以来の天才」といわれている)に14才が挑戦して勝ち目がないと思っていたから、本当に驚いた。名人がコンピュータに負けるという話はきいたことがあるが、生身の中学生に負けるとは驚きだ。藤井四段がこれから加藤九段の記録を破っていくと、どのような称号を授けなければならないのか、新たな問題が発生する。神武天皇の存在自体あやふやなうえに、たとえ神武天皇が実在したとしてもその前には絶対に天皇は存在しなかったはずだから「XX天皇以来の天才」とは言いようがない。「富士山ができて以来の天才」とでもなるのだろうか。
 
ところで、加藤一二三というプロ棋士猫好きの相当の堅物と思われ、過去には近隣住民とノラ猫でもめて裁判になっている。彼は1993年頃から、一戸建て風の家が軒を並べるタウンハウスの自宅庭でノラ猫に餌やりをしていて、その数、最大で18匹にもなったというのだ。猫の糞が他の住民の家などに落ちてハエがたかるなどの被害や、騒音・生ゴミの食い散らかしなどが問題となり、2002年頃より集合住宅の住民17人が、管理組合と共に、プロ棋士の餌やり行為に反対し抗議していたが、彼は、これは地域猫活動だとした上で、猫に避妊手術を受けさせたなどとも主張して、2008年より係争となっていた。彼はキリスト教徒なので、裁判では、「命あるものを大事にしてどうしていけないのか」などと反論していた。
 
この集合住宅の管理規約にはペット飼育禁止となっていたが、自分が餌やりをしている外猫はペットではないと反論、住民側は「みだりに迷惑を及ぼすような行為は禁止」としている管理規約を盾に、明らかに迷惑をこうむっているので、彼がノラ猫にエサやりを中止することと慰謝料など645万円の支払いを求めて裁判に訴えた。
 
2010年、東京地判平22.5.13は、加藤被告に餌やり中止と204万円の支払いを命じて終結、彼はその後別の場所に転居して、そこでも外猫にエサやりを続けているらしく、今回の試合に出るときも猫たちが愛くるしい表情でタクシーに乗って出かけるプロ棋士を見送ったというから、彼は死ぬまでノラ猫にエサやりを続けるつもりなのだろう。