6月12日のDonald Trumpと金正恩の史上初米朝首脳会談は、結局何だったのか。ロシアゲートで追い詰められ崖っぷちに立つTrumpが外交で点数を稼ぎ11月の中間選挙で劣勢の共和党の票をいくらかでも増やしたいという野心から行った無謀な冒険だったというのが、大方のメディアの見方のようである。
世紀の会談前、Trumpは北朝鮮の非核化についてCVID (= Complete, Verifiable & IrreversibleDenuclearization、完全・検証可能且つ不可逆的な非核化)の実現を要求すると意気込んでいたが、でき上がった共同声明には、「朝鮮半島の完全な非核化に向けた協力」という何らの実態を伴わない空文句だけが並べられた。だからこそ、歴代の米国大統領は、北朝鮮との首脳会談に応じてこなかったのだ。民主党の議員は、今回のトップ会談を、注目する価値のない素人の芝居だと酷評している。
交渉の達人と自称するTrumpが朝鮮半島の非核化について金正恩に約束させたのは「完全な非核化」だが、金正恩は、核をどう廃棄するのか、その期限、査察の検証などの具体策を一切明らかにすることはなかった。10-20発の核兵器を所有するとみられる北朝鮮が、期限を設定せず、いずれ核兵器を放棄すると約束するだけで米国に寄る体制の保障を得られたなら、交渉の達人とは金正恩の方であろう。しかも、金正恩が従来から強く求めていた米韓合同軍事演習も中止してくれることになったのだから、今回の勝者は金正恩で、敗者はTrumpということになる。
GDP 20兆ドルの米国のトップと同400億ドルの北朝鮮のトップの会談実現を最大限に自分の功績として、国内で大げさな宣伝に使っているのが金正恩だ。経済力1:500の両国が、あたかも対等の関係のように北朝鮮で報じている。満面の笑みを浮かべてTrumpと握手する金正恩、この二人の共通項は、嘘の塊と人権無視。こいつらの辞書に「誠実」という言葉はない。
米メディアの発表では、Trumpは、大統領就任後2,000回以上の偽りの発言をしてきた、天性のウソつきなのだそうだ。資産の一部は詐欺で手に入れたものでもある。Trumpの人権無視は甚だしく、最近では不法入国移民の親子を別々に収容して米国内で大問題になっている。こんな男だから、親戚・兄弟を殺害し、国民を餓死させても平気な北朝鮮の独裁者に対して、手紙のあて名を“HisExcellency Kim Jong Un”(金正恩陛下)として敬意を表し、「有能な」「信頼できる」bossと持ち上げる。
確かに、会談直後のTrumpと、あれからほぼ1か月になろうとしている今のTrumpの発言には違いがある。Little rocket manのことを「有能で信頼できる」boss と発言したのは間違いだったと認めることになるかもしれない、と自分で言っているのだ。会談直後、Trumpは、今までの大統領は誰一人として北朝鮮のトップと会談することができておらず、自分が歴史を作ったと自慢していたが、間もなく、自分ほど間抜けな大統領は米国にいなかった、と自覚する時が来るだろう。