アミのひとり言

事務所のアイドル犬アミのひとり言です。

鳥獣被害に人工知能

世の中AI人工知能)だのロボットだのと大流行の時代だが、北海道の従業員50人ほどの小さな会社がAIオオカミを発明して、田畑の鳥獣被害を食い止めているという。クマ、シカ、イノシシ、サル、アライグマなどによる農作物の被害は全国的に非常に深刻な問題になっており、少なく見積もっても年間170億円の損害になっている。一方で個体数はここ25年でシカ10倍、イノシシ3倍に増えている現実がある。捕獲するとか侵入防止柵を広範囲に設置するなどの方法で、官民挙げて対策を立てているがなかなか効果が上がっていない。シカにも生きる権利があるからシカたない、なんて言っている場合でもない。
 
そこに現れたのが、金属加工などをしている太田精機(北海道奈井江町)が作ったスーパーモンスターウルフというオオカミ型ロボットだ。田畑を荒らすヒグマやエゾシカなどの野生動物を追い払う方法はないかと研究していたところ、野生動物が皆恐れるオオカミを利用しようということになり、北海道大学東京農業大学との共同実証実験を実施して、7年ほどかけて、全長65cm、高さ50cmのスーパーモンスターウルフが完成した。
 
クマ、シカ、イノシシ、サルなどが近づくとセンサーで探知し、共通の天敵であるオオカミの吠え声(遠吠え)などを最大90dB(デシベル)で1km先まで響かせる。同時に目のLEDライトがモンスタービームを出して点滅させながら首を左右に振るから、動物は恐れおののき退却する。この様子が、田畑に設置した監視カメラの映像で確認でき、確かにAIオオカミの威力は証明された。北海道では威嚇音の到達圏内で野生動物の侵入抑制効果が認められ、千葉県でも農作物を荒らすイノシシを追い払う効果が認められている。その結果、田畑での収穫量が増え、栃木県のゴルフ場では、イノシシによるコースの掘り起こし被害が減ったと喜ばれ、AIオオカミ様様と毛むくじゃらの物体は大歓迎されている。
 
スーパーモンスターウルフは単にオオカミの吠え声を出すだけではない。猟犬の吠え声、クマやイノシシの悲鳴、猟銃の発砲音、動物が忌避する金属音など、野生動物が慣れてしまわないよう57種類もの音がランダムに流れてくる。その中には「お前だけは許さない!」という人間の怒鳴り声も含まれている。(野生動物が人間を天敵と認識するかは不明だが)
 
しかしながら、このスーパーモンスターウルフにも弱点があることがわかった。淡路島で田んぼの稲を荒らすイノシシ対策に設置したところ、確かにAIオオカミの正面からはイノシシは逃げるものの、後ろではイノシシが懸命に土を掘り起こしている姿が、監視カメラの映像から確認できたという。動きに反応するセンサーは正面側に設置されているため、背後に忍び寄るイノシシには効果がないようだ。太田精機は、AIオオカミの首が360度回るように改良するとか、レールを使って移動させるなどして、一段と性能を向上させたウルトラスーパーモンスターウルフの開発に取り組んでいる。人工知能と野生動物の対決だが、間もなく百獣の王である人間が作ったAIで、野生動物から農作物を守ることができる時代が来ると信じたい。