スガ新首相が、安倍前首相並みの独裁者になろうとしているのか、学問的にはとても太刀打ちできそうもない我が国の大物学者に対し、拒否権を行使して、物議をかましている。3年ごとに半数入れ替えの日本学術会議委員(定員210名)の本年度の名簿105人を学術会議側が政府に提出したところ6名が任命拒否された。実際に事務方でこの6人を排除したのは杉田官房副長官(警察出身)のようだが、もちろんスガ首相の了解のもとでやっている。
日本学術会議といえば、行政・産業・国民生活に科学を反映・浸透させることを目的として設立された学術機関で、政府から独立した存在だ。形式的に内閣総理大臣が任命する国家公務員で、国からの補助金も出ているから、スガ首相に拒否権があると勘違いしているかもしれないが、これは大間違いだ。天皇には内閣を任命する権限がある(憲法第6条1項)が、同様の形式的な任命権であり、天皇が、スガは気に入らないから国会に対し、別の人物を指名せよと差し戻すことはない。スガが用意した内閣の大臣名簿に基づき、天皇は国務大臣を任命する権限がある(憲法第7条5号)が、個別に誰は外せとは言わない。スガは形式と実質をごちゃまぜにしてガを通そうとしているだけだ。
いくら任命権があると言っても、独立性の強い学術機関に対して拒否権行使は越権行為だろう。拒否するなら、具体的な理由を述べる必要がある。過去の論文に盗用があるとか、研究資金の横領があるとか、具体的な拒否理由がいる。それがなければ、日本学術会議の推薦名簿に従って任命すればいいのであって、任命権を行使したくないなら総理大臣をやめればいい。時の政権に反対の意見を述べる奴は排除するというのは、民主主義国では望ましくない。
今回、スガが排除しようとした6名は全員、安倍政権(スガ官房長官)の時に、政権の方針に反した意見を正々堂々と述べた学者ばかりだ。特定秘密保護法案(2013年12月成立)に反対意見を述べたのは、加藤陽子東京大学教授及び宇野・東京大学教授、安保関連法案(2015年9月成立)に反対意見を述べたのは小沢・慈恵医大教授、岡田・早稲田大学教授、宇野・東京大学教授、芦名・京都大学教授、そして、共謀罪の趣旨を含む改正組織犯罪処罰法案(2017年6月成立)に反対意見を述べたのは、松宮立命館大学教授及び小沢・慈恵医大教授。
加藤東大教授に至っては、安倍晋三がごり押ししようとした黒川・東京高検検事長の定年延長にも反対意見を述べていたが、結局は、黒川が新聞記者と定期的に賭けマージャン(賭博罪)をしていたことがばれて、せっかくシンゾーに定年延長してもらいながら、検事総長になれず辞任した。この賭博がばれていなければ、今頃は、黒川検事総長が誕生して、河井克行・案里夫婦の運命も変わっていただろうし、カジノ汚職でまた逮捕された秋元司議員も、証人買収でまんまと難を逃れたであろう。もちろん、森友学園・加計学園・桜を見る会などのシンゾー疑惑は、すべて過去のfake news扱いになっていたに違いない。時の政権に批判的な学問的見解は、民主主義国に必要なものであり、これを避ける首相は、所詮、実力がないということなのだろう。