アミのひとり言

事務所のアイドル犬アミのひとり言です。

淡路市の世界平和大観音像

 淡路島に入って間もなく目に付くのが高さ100mもある巨大観音像。淡路出身の実業家・奥内豊吉が大阪市内の不動産業で財を成して、地元還元事業として1977年、53億円ほどの私財をかけて建てたものらしい。但し、にわか作りの観音像のようで、台風により外壁が崩落したり、損傷が激しく、危険な巨大建造物となってしまった。奥内豊吉は1988年に死去、夫の遺志を継いで管理していた妻も2006年亡くなってからは閉鎖され、荒廃して廃墟になってしまったという。

 

 淡路市が2012年に第三者に評価してもらったところ、この巨大観音菩薩像は6.2億円の価値があるということだったそうだが、奥内夫妻の法定相続人は相続を放棄したため、観音像はその土地と共に国庫に帰属することとなり、解体費用8.8億円も国が負担することになった。要するに、巨大観音像を解体撤去する費用は、ほぼ税金で賄われることになる(わずかな土地売却代金はあるが)。建設当初、一時期は一日の観光客2,000人も集めていた観光名所だったそうだが、威厳のある仏像でもなく、単なる成金趣味の観光施設(高さ90mのところに展望台、4階には展望レストランなどがあった)とあって老朽化もひどくなり、放置していては危ないということになったのだ。解体工事は2021年6月に始まり、2022年末までには完了するようだ。

 

 このような仏像・観音像は日本いたるところにあるらしく、加賀温泉に旅行に行った時も駅の近くで大観音像(母子像)を見た。これも淡路観音像と同じようなバブルの時期にできたもので、高さ73mというから、淡路の100mほどではないが巨大な建築物だ。老朽化して、将来取り壊すとなったら、そこそこの費用が掛かるのだろう。この母子像の所有者はお寺(宗教法人)だから、将来の解体費用は、お寺が自己破産しない限り問題ないのかもしれない。しかし、世の中何が起こるか分からない。オクウチグループも8.8億円ほどの解体費用など、何の問題もなく出せる財閥だったけれど、最後は国の世話になった。

 

 栃木県の鬼怒川温泉日光市)には、バブル崩壊後の1999~2008年にかけて経営破綻し廃墟となったホテルが3棟並んである。すべて鉄筋コンクリート造り(8~10階建て)、その解体費用は、約40億円と言われている。景色のいい川沿いの崖にあるから、大規模な足場が必要になり、解体費用は巨額になるのだそうだ。老朽ホテルを放置しておくと、温泉街の景観を損ねるだけではなく、ゴミの不法投棄などの問題のほか、危険構築物となり、地域の安全に悪影響を及ぼすことになる。所有者は破産しているから、最終的には住民・国民の税金で解体することになるのだろう。日光市にはこの3棟も含め廃ホテルが16棟もあって、市の大問題になっているとのこと。

 

 これほど巨大な建築物ではないものの、我が国には約900万軒ほどの空き家があると報じられている。地価の高い地域であれば、土地の売却代金で解体費用は出るが、田舎の空き家で相続放棄された物件は国庫に帰属することになるから、その解体費用は、最終的には国民の税金で賄うことになる。対象の物件が900万軒の5%ほどであったとしても45万軒、国は医療費・介護費・年金のみならず、空き家の解体費用もかかることを覚悟で、国家予算を立てなければならないだろう。