2月にウクライナに侵攻したロシアは、一時的にも支配した地域で「ろ過収容所(Filtration Camp)」を設営し、住民が新ロシア派であるか否かを徹底的に調べ上げ、ウクライナ軍の家族や反ロシアの思想の者などを探し出し、拷問を加え処刑するなどの残虐行為、一種の集団殺戮(genocide)を行っていることが、国連安全保障理事会に報告された。ロシアが占領して、その後、ウクライナが奪還した領土では、必ずと言って集団墓地が見つかっており、処刑されたウクライナ人は数万人に上ると推定されている。
ろ過収容所は、保安検査を行うとともに、個人情報を収集するためのシステムの一部であり、ロシアの武装勢力や関連の武装集団が支配している地域に居住する人、そこから出ようとする人、通過する人など、すべての人がろ過の対象となる。住民にロシアの国籍を与えるとして、手続きに応じる者は、ロシアに強制的に移送させられ、子どもは保護者から引き離され、違法な養子縁組などをされる。応じない者は、ロシアの支配に従順ではない、あるいは迎合しないとみなされて、「反ロシア派」のレッテルを張られ、監禁され、暴行を受けるなど、犯罪者扱いをされる。ろ過の過程で反ロシア派となれば、収容所に何カ月間も拘束されたり、そこから占領地やロシア国内の拘置施設、又は刑務所に送られるという。
強制的に裸にさせて身体検査を行ったり、個人の経歴や家族関係、政治的な考え、忠誠心などについて尋問するろ過収容所から命からがら逃れたウクライナ人の話によれば、携帯電話の内容を調べられ、軍関係者に知人がいるかなど聞かれたあと、プーチンや今回の紛争に関する考えをきかれたという。もちろん、プーチンへの率直な意見などとても口にできる雰囲気ではなく、命が惜しければロシアに従えと強要されたようなものだ。「粗末な部屋に入れられ、電気ショックや殴打、容赦ない尋問などを受ければ、人間はまともな思考ができなくなる。これがロシアの狙いだ。
2月のウクライナ侵攻以降、ロシアに強制移送させられたウクライナ人は数百万人ともいわれ、今回の戦争で、ロシアの狙いは、明らかに民族撲滅(genocide)だ。ウクライナ人をこの地上から消すのが最大の目的だ。ウクライナ人を消せば、ウクライナの領土を大ロシアの領土に組み入れることができる。これがプーチンの狙いだ。しかし、西側諸国がウクライナを支援しており、ロシアの領土拡大の野望が実現することはない。
既にロシア軍の犠牲者は10万人にのぼり、常識的には30万人の負傷者が出ているはずで、まともに戦える戦力は限られる。一日で1,000人ほど殺されている招集兵は役立たず、ロシアには武器も残り少ない。戦争が終われば、ロシアによる「ろ過収容所」の実体が暴かれ、ロシアは「ならず者国家」であったことが、白日のもとにさらされることになるだろう。