不沈艦のはずのミサイル巡洋艦「モスクワ」(Moskva、1982年建造)が、ウクライナが昨年開発したばかりの対艦ミサイルにより、撃沈されたことが確認された。第二次世界大戦後に、敵の攻撃で沈没した軍艦として世界最大であり、ウクライナにとっては見事な快挙だ。4月13日、黒海に停泊中のロシア・ミサイル巡洋艦Moskvaに、ウクライナのミサイル(Neptune)が2発命中して、巡洋艦に積んでいた弾薬が爆発、ロシア側は、即日「重大な損傷を被った」と発表したが、重大な損傷の原因は「弾薬の爆発による火災」とし、乗組員(510名)は全員、付近のロシア艦に退避して無事であり、艦上のミサイルシステムなどは損傷を受けておらず、火災は局所的で同艦は浮力を保持していると公表していた。
しかし、翌14日、修理のため港に曳航中の同艦は、艦体の損傷が原因で傾き、悪天候のため沈没したと発表した。ロシアの首都名を冠したPutinが誇る軍艦が、ウクライナが開発した対艦ミサイルにやられるとは、ロシア軍は予想していなかったようだ。このミサイルで艦長のAnton Kuprinも死亡したとされる。他にどれほどの人的被害があったかは不明だが、艦長以外の乗組員全員が無傷で避難できたとは考えにくい。ロシアにとっては非常に大きな打撃で、ロシア軍の戦意をそぐ効果抜群と言わざるを得ない。
当時、戦艦Moskvaは沖合からおよそ100kmの黒海上にいたが、Neptuneミサイルの射程は300km、危なくて近寄れないため、他の艦艇も海岸から遠くに離れたという。これでは、ロシア海軍は戦えない。戦艦Moskvaは全長186m、巡航時速37knots(59km)、対艦ミサイル、対潜水艦兵器、ヘリなどを備えていたが、すべては海の底に沈んでしまった。ロシア黒海艦隊の旗艦が沈没したことについて、ウクライナのZelensky大統領は、「ロシアの軍艦は、海の底へ向かうしかできないと示した。」と、ロシア侵略戦争開始50日の演説でこき下ろした。
先月には、同じ黒海の港に停泊中のロシア大型揚陸艦(Saratov)がウクライナの短距離弾道弾で爆破・炎上し、破壊されたところだった。海戦50日でロシア側の戦力は30%ほど破壊され、ロシア兵の人的被害も2万人を下らないとの分析もある。一日2兆円から2.5兆円といわれる戦費は既に100兆円以上費やしている。国家予算35兆円、GDP 150兆円のロシアにとって、今後もこの戦費を捻出するのは至難の業だ。政権内部の誰かがPutinを止めるだろう。これ以上Putinは自国民をもだまし続けて戦争を継続するのは、かなり難しいのではないか。