アミのひとり言

事務所のアイドル犬アミのひとり言です。

米国で年間1,300万人に全裸身体検査

アメリカでは年間1,300万人が留置所・刑務所に送られているが、従来から重罪犯、武器・麻薬・ギャング・テロがらみの者にはシャワーをさせて衣服・下着を検査すると同時に全裸身体検査(strip search)を行っている。武器・麻薬などを靴底、下着の中、かつらの中のみならず自分の体の中に隠し持っていて、留置所・刑務所内で問題を起こす者が後を絶たないからという理由だ。犬に綱を付けずに散歩させていて捕まった者、車両方向指示器を出さずに左折して捕まった者などに対しても全裸身体検査をするのはアメリカ合衆国憲章(基本的人権)に違反するかと問題になった裁判で先月最高裁判決(2012年4月2日、http://www.supremecourt.gov/opinions/11pdf/10-945.pdf)が出た。もともと全米50州の内40州ではどんな軽微な犯罪でも留置所に入れる前に全裸身体検査を義務付けていたが、10州では交通違反などの軽微な犯罪に対して全裸身体検査は州の法律で認められていなかった。New Jersey州に住む原告Mr. Albert Florence(自動車販売会社の経理担当役員)は交通違反の罰金を月賦で払い続けていたが一度1週間ほど支払いが遅れたことがあり、行政のコンピューター入力の間違いでずっと未納の状態が継続していると誤認され逮捕・拘留された際、人間の尊厳を否定するような全裸身体捜査を強要されたという。過去には反戦デモに参加した修道女まで不法侵入罪で逮捕され全裸身体検査をされたこともある。判決では罪の軽重にかかわらず、武器・麻薬・ギャング・テロがらみであろうとなかろうと全員に全裸身体検査をしても合衆国憲章違反にはならないと原告の主張は退けられた。麻薬を直腸(肛門と大腸の間)に隠す者、女性性器内に隠す者、男性性器に絆創膏で張りつけて隠す者など何でもありなので、単にシャワーをさせてその間に下着を検査しても留置所内に次から次に武器・麻薬の類が入ってくる。困り果てた警察はまず全裸身体検査で体のくぼみを視覚的にすべてチェックするしか方法がなかったのだ。このプライバシー権と公の秩序維持でどちらが優先されるべきかと争われた裁判で最高裁は公の秩序を選んだのだ。9.11事件で飛行機を乗っ取った実行犯の一人はその2日前の9月9日にスピード違反で罰金になっていたし、1995年オクラホマ市の爆破事件で死刑になった男(Timothy McVeigh)は事件の前にナンバープレートをはずして自動車を運転したとして交通違反で捕まっていた。これらの場合に全裸身体検査をしていれば後の事件を避けることができたのか疑問は残るが、少なくとも警察に捕まれば全裸身体検査を受けることになるということを徹底すれば、ある程度犯罪抑制効果があるのではないかと期待しているのだろう。