アミのひとり言

事務所のアイドル犬アミのひとり言です。

タックスヘイブンという名の宝島の女王

昨年英国でベストセラーとなった本”Treasure Islands and the Men who Stole the World”(宝島:「タックスヘイブンの闇」)の翻訳が出た。著者はニコラス・シャクソン(Nicholas Shaxson)、スイス在住の46才、税専門のジャーナリストだ。巨額損失隠しオリンパスも巨額年金資金を消したAIJ投資顧問も活躍の場はケイマン諸島(Cayman Islands)というオフショアのタックスヘイブン租税回避地、tax haven)だった。Cayman Islands(人口57,000)もVirgin Islands(ヴァージン諸島、人口25,000)も共に中米にある英国海外領土で悪名高き海賊の島tax haven。英国は表面上クリーンマネーの金融センターと自称しているが、実は海外領土で世界規模の脱税幇助行為を正々堂々とやっている。世界第5位の金融センターであるCayman Islandsには8万社が登記をし、ヘッジファンドの75%以上がここで活躍する。Virgin Islandsに至っては、80万社が登録をしていて、共にその目的は各国で正当な課税を逃れるための隠れ蓑だ。これらの海外領土の最高権力者である総督は英国女王が任命する。即位60 周年をわが国の天皇・皇后など世界各国の王室から祝福されているElizabeth女王は、更にチャンネル諸島(Channel Islands)に英国王室属領(Crown dependencies)として二つの島ジャージィ(Jersey Island)及びガーンジー(Guernsey Island)も所有していて、これらの島(自立国)はシティの別働隊として限りなく怪しい資金を洗浄している(money laundering)大金融センターだ。著者Nicholas Shaxsonによれば世界の貿易取引の半分以上は書類上これらの海賊たちが住む宝島を経由している。世界の銀行資産の半分以上は宝島経由で送金され、国際的な銀行業務や債券発行業務の約85%が宝島経由で行われているというのだ。IMF推定によれば2010年の世界総生産の1/3に相当する部分が宝島の金融センターを経由している。

これらの分厚い蜘蛛の巣が張られた「守秘法域」(secrecy jurisdictions)は一握りの世界の富裕層に莫大な利益をもたらし、結果的に大多数の庶民には脱税された分だけ税負担が増す仕組みを作り出す。格差社会の根源はタックスヘイブンという名のオフショア宝島の存在にあり、即位60年の女王が本当に祝うべきは、発展途上国から自分の宝島(tax haven)に流れこむ資金が年間1兆ドル(80兆円)を超えたという事実であろう。大量のイワシが毎年確実に女王の網にかかる仕組みなのだ。「女王は指導力と安定の象徴」といわれるが、その女王の後見人たる英国政府は、これら王室属領を実質上の支配下に置き、国策としてブラックマネーをシティーの闇に葬り去り国際金融上の膨大な利益を享受している。女王はmoney launderingの象徴でもある。