アミのひとり言

事務所のアイドル犬アミのひとり言です。

盗難車でハイテク空き巣

どの国でも事件で使われる自動車は決まって盗難車だ。盗難車にATMを丸ごと積んで銀行から逃げる者、盗難車でシャッターを壊して宝石店に押し入る者が自分の車でやれば、証拠は防犯カメラに写りやがて捕まるからだ。イタリア全土で盗難車発生の割合は確か1-2% 位だったが、人気のある登録半年以内の新車に限るとその確率は10倍以上にもなる。イタリア駐在中に自分の自動車を盗られた日本人は結構いる。容易にboxという車庫が見つからないので、やむなく路上に駐車せざるをえない。あの国には日本のように車庫証明は必要ないから路上駐車は合法だ。もちろん駐車料金も不要。その代わりカーラジオ等自動車の中に残しておくと一晩で窓ガラスが割られカーラジオも盗られていた。昼間一寸路上に駐車する時でもカーラジオは取り外してハンドバッグのように持ち歩いていた。今の日本なら車を離れるたびにカーナビをはずして持ち歩くようなものだろう。

僕がイタリアに駐在になった時、前任の駐在員の経験をきいたことがあるが、イタリアの泥棒はハイテクというか、かなり芸の細かい業をする。ある時、週末の旅行に行こうとトランクに積む荷物の準備をしていた時、最後の荷物を持ってアパートの前の道に停めてあった自動車のところに行くと、もうその自動車がなくなっていた。運が悪いと諦め、警察に盗難車の届出をし、週末の旅行は取りやめになったが、こともあろうに数日後、その自動車が自分のアパートの前の道に駐車されていたという。車の中にはメモがあり「悪いとは思いつつ自分の車が故障したため、緊急の用事を済ますためにあなたの自動車を勝手に借りてしまったので、スカラの券を2枚お詫びのしるしにお受けとりください」ということで、貴重なスカラ座のオペラの券と一緒に自動車が戻ってきた。

スカラの券は one season 通しで買う金持ちが結構いるので、なかなか一般の者にはバラで手に入らない。しかももらった券は1階のすごくいい席だ。イタ公もまんざらではないわと思いなおし、夫婦でおしゃれをして指定日のオペラに行ったところ、今度家に帰ってきたら家の中がすっかり荒らされていて、全ての貴重品がなくなっていたとのこと。オペラは夜9時頃に始まり夜半過ぎに終わる。プロの仕事師は離れたところからアパートの電気が消えることを確認してオペラが終わる前までに一仕事を済ませばいいのでゆっくり仕事ができる。これなら高価なスカラの券も充分もとがとれる。本当に油断もすきもない芸術的自動車泥棒だ。

特に夏休みは1週間とか2週間とか連続して家を留守にするので敵は仕事をしやすい。夏休み旅行から帰ったら家が空っぽになっていたという同僚もいた。同じ建物の住人は業者が来て引越ししたものと思っていたというから、「仕事」はてきぱきとやっていたに違いない。こんな輩が路上駐車している自動車を失敬して生計を立てているのだから被害は防ぎようがない。せいぜい保険だけはかけておこう。