11月29日、国連総会はパレスチナの国連での地位をオブザーバー国家に格上げする決議案を圧倒的多数で採択した。イスラエルの味方米国が反対しているため、未だ国連加盟国になることはできず、国連総会での投票権もないが、パレスチナの土地を追われて難民となったパレスチナ人約400万人（全世界で約1,000万人）にとって祖国回復の着実な第一歩にはなるだろう。
パレスチナの地は16世紀初頭からオスマン帝国に支配されてきたが第一次世界大戦でこのイスラム国家が消滅し英国が統治を始めたところからパレスチナ人の悲劇は始まる。英国は第一次世界大戦で、オスマントルコと戦い、パレスチナ兵の力を利用するため、パレスチナにアラブ国家の独立を認めると約束しつつ、ユダヤ人の資金も必要としたので同じパレスチナの地にユダヤ国家の建設も約束した。1930年代以後のナチスによるユダヤ人の迫害が激しくなるにつれ、数多くのユダヤ人が英国に約束された筈の祖国パレスチナの地に逃れてきた。逃れそびれてホロコーストで虐殺されたユダヤ人の数は600万人ともいわれる。
第二次世界大戦が終結してパレスチナ人とユダヤ人の衝突が頻発すると英国は問題解決を国連に依頼する。国連はパレスチナの地をパレスチナ人の国家（面積の43%）とユダヤ人の国家（Israel, 面積の57%）に分割するパレスチナ分割決議を採択した。この分割決議にアラブ人は納得せず拒否、しかし、ユダヤ人は受け入れ、1947年一方的にイスラエルを建国した。反発するアラブ世界は世界の大富豪イスラエルと戦争を繰り返す（1967年の第3次中東戦争終結まで）が、結果はイスラエルがパレスチナ分割決議の割合をはるかに超えて占領することになり、大量のパレスチナ難民が発生したのだ。
現在のパレスチナ人居住区はガザ地区（Gaza, 面積種子島くらい）＋ヨルダン川西岸地区（West Bank, 面積三重県くらい）しかない。二千年に渡って祖国をなくしたユダヤ人は、ようやく手にした祖国イスラエルを決して諦めることはできない。核の力をもって死守するだろう（核保有国であることは公然の秘密）。一方のパレスチナ人はもともと自分達の土地であり、異教徒ユダヤ人が居座ることを絶対に認めるわけにいかない。イスラエルとパレスチナ以外の国々は、パレスチナの地に二国が共存する解決法しかないというが、当事国同士は他方を国と認めるわけにいかない。イスラエルは絶対にパレスチナを国家と認めることはできないと、今回の国連決議に反発、対抗措置としてパレスチナ自治区に、新たに3,000戸のユダヤ人用入植住宅を建設する方針を発表した。パレスチナ・イスラエルの問題は日韓・日中程度の問題の数万倍も難しい方程式を解くようなものだ。
