アミのひとり言

事務所のアイドル犬アミのひとり言です。

西英の領土問題

EUの中で領土問題が再燃している。明らかにスペインの領土の一部を北の島国英国が占領しているのだ。イベリア半島の南東端に突き出した島ジブラルタル(Gibraltar, 面積6.5km²)は過去300年ほど英国が実行支配している。1713年のユトレヒト条約(Treaty of Utrecht)により、外交的には、スペインが英国領と認めたものだが、その条約の解釈に疑義があるというのだ。

そもそもユトレヒト条約締結に至った原因はスペイン継承戦争、英蘭組と西仏組の海軍がGibraltar半島辺りで戦い、西仏組が負けたためスペインはやむなくこの講和条約の条件であるGibraltarの町、城、港、要塞の所有と軍事利用を永久に英国に認めた。しかし、香港のように99年と期限を決めたいない「永久(for ever)」に文字どおりの意味があるのか。英国人がスペインの不動産を買って所有するのは自由だが、その土地の主権はスペインにあるように、Gibraltarの主権は我が国にあるとスペインは主張する。現に国連の非植民地化委員会(Special Committee on Decolonization)は英国のGibraltar領有を植民地主義的だとして返還を促す決議を採択している。

国連非植民地化委員会は世界17カ所の領土を植民地所有と非難しているが、うち10カ所は世界の「紳士国」イギリスの領土だ。アルゼンチン沖のFalkland諸島も1833年から英国が支配していて、紳士淑女の国の元首相Margarette Thatcherがアルゼンチンの返還要求に対して武力で拒絶したのは記憶に新しい。この島は英国が海賊的に占領したもので、アルゼンチンが条約で割譲に合意したものではない。大英帝国は、1776-1783年にかけて、最大の植民地アメリカ合衆国を失ったものの、依然大植民地支配国だ。

一方の被害国であるスペインだが、自らも隣国モロッコに飛び地として海外領土(植民地)を持つ。セウタ(Ceuta)とメリリャ(Melilla)だ。Gibraltar海峡すぐ近くのCeutaは面積28km2、人口8万人ほど。もともとポルトガルが勝手に植民地としていたものを、これまたポルトガル・スペイン両国が勝手にスペインに割譲すると決めたものだ。(1668年リスボン条約)もう一つのMelillaは面積20km²、人口7万人ほど、スペインからのフェリーは6時間で着く。両海外領土間の距離は230kmほど、海岸線沿いに自動車で走って7-8時間だ。15世紀末、スペインは国内からアラブ人を追い出し、キリスト教徒がスペインの支配を取り戻したが、その勢いで1497年Melilla(当時の重要な港湾都市)まで船で到達し、以来勝手に占領を継続している。モロッコが1954年に独立した際、当然Ceuta & Melillaの領有権も主張したが、スペインは、この二つの領土はスペイン本国の一部だと主張して返還する意思はこれっぽちもない。

英国にGibraltarを返せと言うなら、Ceuta & Melillaをモロッコに返すべきだろう。スペインはアフリカ西部のカナリア諸島もスペイン領土としているが、モロッコはこれも返せと言っている。
植民地支配は過去のものではない。人間の性として、盗った物を返すには、とんでもない勇気がいるということだ。英国もスペインも自己中心主義の典型とみる。