アミのひとり言

事務所のアイドル犬アミのひとり言です。

英西間300年来の領土問題

 大英帝国が1704年に占領したスペイン南端の半島ジブラルタル(Gibraltar、対岸はモロッコ)が、本年末の英国EU離脱を機に、英西間の古い領土問題として現実的課題になってきた。300年前、スペイン継承戦争(1701~1714年)というのがあり、スペインの王位継承問題に、他国である英国が首を突っ込み、軍隊を派遣してスペインの領土を侵略して今も居座っている。Gibraltarがイギリス王領植民地(crown colonies = 国連の表記、英国は単に「海外領土」= overseas territoryと呼ぶ)として現在も英国の支配下にある事実は、300年以上前、英国がスペイン王位後継問題に内政干渉して、どさくさの中で占領した半島であり、第二次大戦後、国連は植民地の独立を支援する方針をとったにも拘わらず、英国は違法にもスペインの中で植民地を維持し続けている。

 

 300年ほど前のスペインでは、当時の国王カルロス2世(Carlos Ⅱ)に子がなく、フランス王ルイ14世(Louis XIV、ブルボン家=Bourbon=)が自分の孫Felipeをスペイン王として認めてもらうために、イギリス海軍が占領したGibraltarを英国領とすることを認めたのだ。1713年のいわゆるユトレヒト条約(英国対仏西)。英国海軍にとって、自国から離れたイベリア半島に自国領土があると、軍艦の補給などで大いに役立つが、今はその必要もなく、単に一旦自国の領土になったものを減らしたくないというだけだ(他に排他的経済水域の漁業権などあり)。アルゼンチン沖にあるフォークランド(Falkland)島も同じような理由で英国の海外領土だ。経緯は違うが、ロシアが実効支配している北方四島も、ロシアは既得権益と考えているので手放さないのだろう。

 

 Carlos Ⅱの前までのスペインはAustriaハプスブルク家(Habsburg)の王だったが、300年前からフランスBourbon家の王になり、一時中断してJuan Carlos → Felipe現国王に引き継がれている。その間ずっとスペイン南端の半島Gibraltar(6.5㎢)は英国の所有となっている。英国は、本年12月31日で正式にEUから離脱するので、イベリア半島にはスペイン・ポルトガルというEU加盟国しかないはずが、GibraltarだけはEUでないということになり、国境を復活させなければならない。人口3.4万人のGibraltarに、1.4万人のスペイン人が毎日「国境」を渡って働きに行っているので、一人5秒かかるpassport controlにスペイン側、英国側でそれぞれ少なくとも20人くらいの係り員を配置しなければならない。しかも越境労働者の長蛇の列ができるはずだから、通勤時間が毎日1時間余計かかることになる。

 

 英国が、EU離脱を決めたことで、Gibraltarはいよいよ自分たちの運命を、自分たちで決めなければならない時が迫りつつある。スペインはこれを機に、主権をスペインに返せと動き始めている。過去には英西共同主権をスペインが提案したこともあったが、英国が拒否している。Gibraltarが独立したらどうかという考えもあるが、人口3.4万人の弱小国にとり、これは現実的ではない。人口の半分以上は英国人・スペイン人の末裔だが、2002年の調査では、住民は英西共同主権を望まず、英国への帰属を圧倒的多数で希望した。その後の英国EU離脱投票では96%の住民がEU残留を希望した。こうなったら、再度住民投票をして、EUのスペインかEUでない英国かをGibraltarの住民に決めさせ、その決定に両国が従うしか方法はないのではないか。