アミのひとり言

事務所のアイドル犬アミのひとり言です。

クリミアから北方領土・尖閣諸島へ

Putinによるクリミア編入は、国際法違反であり、容認できないとして、欧米のロシアに対する経済制裁が始まったが、Putinと仲良くしてあわよくば北方領土の返還を期待する我が国外交にとっては、悩ましい問題が浮上してきた。原則論からいえば、ロシアの軍事行動、クリミア合併は違法・野蛮な行為であるから、日本も欧米にならって即経済制裁を課すべきだ。欧米が経済制裁に動いている時に、日露が「日露投資フォーラム」など開催している場合ではない。しかし、ロシア経済は特に欧州(EU)に依存しており、EUから本格的な経済制裁を受けると重要な輸出商品である石油・ガスの市場を失う。そこで、北方領土問題で日本にある程度譲歩して、日本との取引を拡大しようとするかもしれない。

Putinは1954年までクリミアが旧ソ連時代のロシアに帰属していたことから、「ロシア固有の領土」を取り戻しただけと主張する。その論理の延長では、1945年まで日本に帰属した北方領土は「日本固有の領土」とみなすことになり、歯舞・色丹くらいなら返してもよいとなるかもしれない。がめついPutinのことだから、盗んだ島であっても返すにはどんな対価を求めてくるか測り知れないけれど。

他国(ウクライナ)の領土であるクリミアを併合しても、単に国際社会から経済制裁を課されるだけで済む(欧米が軍事行動を起こさない)ことを確認した中国は、狙っている尖閣諸島の武力による併合の及ぼす影響を計算しているだろう。米国はこれまで、尖閣諸島の日本による実効支配を認めており、万が一中国が尖閣諸島に軍事侵攻してきた場合は、日米安全保障条約により中国を攻撃すると口では言うものの、クリミア併合に対して日本が欧米に同調せず、ロシアと別の関係を続けたとすれば、尖閣諸島に実力行使する中国に対して本当に軍隊を出すか、大いに疑問となるところだ。Obama米国は、化学兵器を使用したシリア・アサド政権に対しても「超えてはならない一線を越えた場合は軍隊を出す」と言い続けたが、明らかに一線を越えたにもかかわらず、議会の同意が得られなかったとして軍隊を出さなかった。

中国は、米国がもはや世界の警察官ではないことを見通している。日米安保にしても、一方的に米国が日本を守るだけの有効な条約が機能するはずがない。集団的自衛権を日本が認めるなら、相互に利益があり得るが、日本が他国に攻められた時に米国が助けてくれて、米国が南沙諸島で中国から攻撃を受けた場合、日本側は反撃に加わることができないでは、万が一の場合の担保にならない。

日本外交はまたもや難しい連立方程式に直面している。Putinがロシアの資源開発と引き換えに北方領土の日本帰属を認めたと仮定しても、クリミアのように、いつの日か住民投票により、多数決でロシアへの帰属を望むという方向に持って行きかねない。でもロシアが欧米の経済制裁を受けている時期は、北方領土交渉を前進させる千載一遇のチャンスでもある。敵はしたたかすぎるPutin。そしてロシアの行動、米国の反応を日々研究しつつ尖閣諸島を虎視眈々と狙う中国。外交はいつも千山万水なり。