15日に発生したBoston Marathon爆破事件の犯人は、米国在住のチェチェン人兄弟、兄26才は元ボクシングの選手、弟19才は優秀な医学部学生。鎌倉時代に日本征服を企てたモンゴル（元寇）は、同じ頃、西にはコーカサス地方に進出し、チェチェン（Chechnya）を征服した。「征服」の実態は略奪・強姦・皆殺しであり、当時のキリスト教教会は蒙古来襲になすすべもなく、完全に無力であることを証明したため、生き残ったチェチェン人は、心の支えにイスラム教に改宗した。
やがて蒙古も力を失い、ロシア帝国がチェチェンを征服する。チェチェンに油田が見つかったことからロシアはチェチェンを併合、ソ連になってからは反ソ連の気概が強いチェチェン人の多くはスターリンに粛清されたという歴史を持つ。現在のチェチェン共和国はロシアからの独立を目指すも、ロシアはチェチェンの石油が枯渇するまで独立を絶対に認めない。
1990年、ソ連崩壊に伴い、チェチェン共和国は一度独立を宣言したが、チェチェンの分離独立を認めないロシアが軍事介入し、ロシア・チェチェンは紛争状態にある。チェチェン武装勢力はモスクワ等でテロ事件を起こし、抵抗している。1999年9月ロシア国内で高層集合住宅爆破事件が4件連続して発生（死者約300人）、プーチンはチェチェンによるテロと発表し、大規模のチェチェン進攻作戦に出た。しかし、これがチェチェン武装独立派の仕業ではなく、プーチンによる自作自演で、チェチェン弾圧の大義名分にしようとしただけと暴露されるや、暴露した元KGB（ロシア秘密警察）のリトビネンコ氏（Alexander Litvinenko）は国外追放され、亡命先の英国で毒殺された。
ロシアによるチェチェン弾圧がエスカレートする中、2002年、チェチェン武装勢力によるモスクワ劇場占拠事件が発生し、130人死亡した。2004年には、モスクワ地下鉄爆破事件で240人死亡、同年9月のBeslan中等学校襲撃事件では行方不明者を含めて400-500人死亡、負傷者700人以上の犠牲者を出している。
Boston爆破犯兄弟はこのようなチェチェンを逃れ10年ほど前に米国に移住した。故郷チェチェンはロシアに乗っ取られ、ロシアを批判する者は外国に逃れようとロシア秘密警察の出先に消される。そのような兄弟の故郷を立て直すべく立ちあがったのがウマロフ司令官（Doku Umarov）、チェチェンを含むイスラム地域を「コーカサス首長国」（Caucasus Emirate）とした。Umarovは「我々の敵はロシアのみにあらず、イスラムに敵対する全ての国だ」と主張しており、Boston事件の兄弟は米国になじめず、Umarovの影響を受けて今回の犯行に及んだと想像される。米国はUmarovをテロリストと認定し、彼の所在に関する情報提供者に500万ドルの報奨金を出す。Nicknameは「ロシアのOsama bin Laden」。故郷を失った人間は生に執着しないから恐ろしい。
