アミのひとり言

事務所のアイドル犬アミのひとり言です。

クレプトマニアという病気

Kleptomaniaとは、解放感や満足感を得るために衝動的に窃盗を繰り返す精神疾患で、病的窃盗癖とも訳される。利益よりも窃盗自体が目的化しているのが特徴で、窃盗直前のスリルを楽しみ、窃盗を犯す時の快感・満足感・解放感を求める病気だ。盗むことに生き甲斐を感じる者もいるという。交通事故、いじめ、リストラ、配偶者の浮気などの強いストレスがきっかけになったりする。なかには裕福な人も多いのだそうだ。

昨年京都地裁で窃盗罪・懲役1年を言い渡され、窃盗癖を治療中なので執行猶予付き判決にしてほしいと控訴していた60代主婦につき、先月控訴審判決が出た。大阪高判平25.3.26は「治療を受けていることで刑事責任を格段に軽減できるものではない」として懲役1年の判決を支持した。この女性は、約15年前から万引きを繰り返して、罰金刑や執行猶予付有罪判決を受けていたが、昨年10月スーパーで食料品18点を盗んだとして再び逮捕されたもの。お金もあるのに、欲しくもないものに手を出して万引きを繰り返す不思議な行動を夫は理解できずにいたが、偶然インターネットで「クレプトマニア(Kleptomania)」という病名を見つけ、妻の行動と同じ症状に驚き専門の治療施設に通わせたところ、症状がよくなったという。しかし裁判所は過去の犯罪に対する罪を償ってから治療を継続しなさいと、服役させる道を選んだ。

東京地判平25.1.9は、仮釈放中に万引きをして再度逮捕・起訴された49才の男性につき、3年6月の懲役刑を言い渡した。この男性は裁判員裁判の判決が出る前日にまた万引きをしたため、反省していないと認められ3年6月の実刑判決になったものだ。弁護士は、万引きは病気なので刑務所でなく専門施設で治療させてほしいと主張したが、裁判官は罪の重さを自覚し、服役後治療に専念すべきと執行猶予を認めなかった。この男性もKleptomaniaという精神疾患と診断されている。

Kleptomaniaは衝動制御の障害による精神疾患であり、病的賭博癖(ギャンブル依存症)などと同じ範疇に入る。アルコール依存症の人が飲酒欲求を制御できないように、病的窃盗癖者は窃盗行為への衝動・欲望・誘惑に抵抗することができない。Kleptomaniaの治療薬はいろいろあるようだが、最も効果的な治療法は日本では「赤城高原ホスピタル(竹村道夫院長)」で実践している嗜癖治療を目的としたグループミーティング(message meeting)という。病院内の自助グループと思われる。犯罪は犯罪として罰せられるが、再犯を防ぐためにも、専門医による病気の根本治療が最も効果的のようだ。