アミのひとり言

事務所のアイドル犬アミのひとり言です。

停車中の自動車も危険運転罪

 自動車運転死傷行為処罰法第2条では、「重大な交通の危険を生じさせる速度で自動車を運転する行為」は危険運転となり、人を負傷させたら懲役15年以下、人を死亡させたら懲役1年以上に処せられる。ケガさせただけでも最高15年の懲役、死亡させるほどの事故であれば、ほかにも刑法に触れる行為をしていて罪は加重されるから懲役30年まであってもおかしくない。

 

 5年前の6月、東名高速道路であおり運転を繰り返し、夫婦を死亡させた石橋和歩(事故当時25才)に対して、差し戻し審で横浜地裁は、危険運転致死罪を認め、再度、懲役18年の実刑を言い渡した。2018年12月14日の横浜地裁判決は、部分的にしか危険運転致死を認めなかったが、被告が危険運転ではないと控訴したため、東京高裁の判決を待つことになり、東京高裁は2019年12月6日、被告の一連の行為は危険運転致死罪が適用されると判断して、横浜地裁でやり直しすることになったもの。

 

 被告の言い分は、時速ゼロで停止中の自動車は「重大な交通の危険を生じさせる速度」で運転しておらず、危険運転致死罪に該当しないと主張する。しかし、あおり運転により、追い越し車線上に夫婦の車を無理やり停車させて、追突事故を誘発した一連の行為は、危険運転致死罪に該当するとの結論だ。高速道路の追い越し車線に自動車を停車させて夫婦に暴力をふるっていた時に、後続の(前方不注意)トラックが夫婦の自動車に突っ込み、夫婦は死亡した。

 

 被告の主張(弁護士の入れ智慧か)は、時速0kmの自動車が危険「運転」罪に該当するはずがなく、夫婦の死亡の原因は前方不注意のトラックだと無罪を主張したため、裁判が長引いた。死亡事故発生の時点で自分は運転しておらず、トラックが突っ込まなければ夫婦は死ななかったという

 

 今回の判決(2022年6月6日、横浜地裁)で、男の一連の行為自体が危険運転致死罪に該当すると断罪され、死亡事故発生時に自分の車が時速0kmであっても、危険運転に違いはなく、あおり運転と夫婦の死亡の間には、因果関係があると認められた。男はすぐに控訴すると発表しているが、最高裁に行っても結論は変わらないだろう。この男のおかげで、その後、あおり運転は「危険運転」として、自動車運転死傷行為処罰法第2条が改正され、「重大な交通の危険を生じさせる速度」は必須の条件ではなくなった。

 

 車の通行を妨害する目的で、走行中の車の前方で停止ししたり、著しく接近する行為も危険運転となり、走行中の自動車に停止又は徐行をさせる行為も危険運転と改正された。そのような行為の結果、死亡事故を起こせば、危険運転致死罪となる。石橋和歩は、自動車運転死傷行為処罰法改正前に事故を起こしたため、これだけひどい事故を起こしても、懲役わずか18年で済んだことに感謝すべきで、これ以上裁判を続けても無駄というものだ。2019年8月、あおり運転殴打事件を起こした宮崎文夫(当時43才)は、死亡事故に至っていなかったため、懲役2年6カ月、保護観察付執行猶予4年となったが、法改正後の今なら、もっと厳しく処罰されるはずだ。