アミのひとり言

事務所のアイドル犬アミのひとり言です。

シャープを買ったTerry Gou

台湾のホンハイ精密工業Hon Hai Precisionがシャープに3,888億円(シャープ株式の66%)出資し、実質的にシャープを買収した。電子機器受託生産の世界最大手(傘下の従業員数100万人以上、売上15兆円)による出資総額6,000億円とも言われるが、創業者会長の郭台銘(英語名Terry Gou65才)の個人資産は60億㌦(約7,000億円)、自分の全財産をつぎ込んでもシャープがほしいということのようだ。
 
Terry Gouの父親は中国で警察官として勤務していたが、1949年、毛沢東共産党が中国を支配するに至り、劣勢の中国国民党に所属する彼は妻と娘を連れて一家で中国山東省から台湾に移り住んだ。Terry Gouはこの翌年1950年に台湾で生まれた。父親は台湾でも現場の警察官を続けた。Terry Gou台北市にある中国海事専科学校(現台北海洋技術学院)の航運管理科を卒業し、兵役の後、復興航運に入社、船の手配を担当した。そこで、貿易よりも製品に興味を持ち、製造業の将来性を感じて、会社員1年にして、24才で独立起業したと言う。台湾版松下幸之助のようなものだ。一代で台湾一・二位を争う大富豪になったのだから、その商売の嗅覚はただものではない。
 
ホンハイが米アップルに供給するスマートフォン向け液晶画面は急速に進化を遂げ、近々有機EL(Electro Luminescence)に切り替わる。この分野では韓国Samsung ElectronicsLG Displayが先行しており、ホンハイはシャープの有機EL量産化を見越して、2年以内にアップルに供給しようとしているようだ。シャープには、有機ELの次の液晶技術IGZO(透明アモルファス酸化物半導体もある。今は有機ELでつないで、数年以内に、世界でシャープ1社しか生産できないIGZO液晶により業界独占を狙うという、壮大な計画を持っているようだ。IGZOで世界シェアを独占するには、どうしてもシャープが必要だ。Terry Gouの全財産を投資するだけの価値はある。
 
彼は24才の時、$7,500(当時のレートで約200万円)を元手に始めた「ホンハイプラスチック」から、現在の世界最大規模の電子機器受託製造会社を一代で起こした。エレクトロニクスの時代が来ると信じて、顧客から要望・要求される部品は何でも作るために一日16時間働いたという。今や米AppleHewlett PackardフィンランドNokiaSonyなど、あらゆる商品にホンハイの部品は使われているが「ホンハイ」ブランドの最終商品はない。その点、シャープを手に入れることで、いわゆる白物家電といわれる冷蔵庫・洗濯機からいろんな最終製品を「シャープ」ブランドで世に出すことができる。これこそがTerry Gouの夢見た将来だ。
 
Terry Gouの妻の祖母は日本人、東日本大震災の際は、Terry Gouの名で1億元(3.5億円)、ホンハイとして1億元、合計7億円の寄付をしている。しかし、シャープに投資するTerry Gouは、慈善事業家ではなく、純粋に商売人として、勝算があるから金をつぎ込むのだ。