アミのひとり言

事務所のアイドル犬アミのひとり言です。

米国で医学部学費全額無料

寄付の大国アメリカで、医学部の学生全員に学費相当額全額を返済不要の奨学金の形で支給するという私立大学が現れた。New York大学医学部の現在在籍中の学生全員と今後入学する学生全員が対象になる。年額$5.5万(約600万円)の授業料が実質タダになる。しかも、学業成績も家の財政状況も無関係に、医学生全員に受給資格があるというから夢のような話だ。但し、授業料が無料になる医学生でも、自力で、年額平均$2.7万(約300万円)の生活費や住居費、本代等を工面する必要はある。この奨学金ができるまでは、一般的な医学生は年額900万円の費用が掛かっていたのだ。(公立大学の医学部は、私立の$8.2900万円に対して、$6.1670万円)
 
医学部学費無料の背景として、医学部の学費が高すぎて、医学部が敬遠されているという事実があるのだそうだ。一般的な奨学金は貸与型なので、返済義務がある。米国で、医学部に入学する学生は毎年約2万人いる。2017年に医学部を卒業した学生の75%が借金を抱えており、その平均額は$19万(約2,100万円)というから、社会に出る前にこれだけの負債を負うのは、いくら高収入が期待される職業とはいえ、非常に危険な人生の船出となる。医師も人間だから間違いもある、そのため個人で保険に加入しなければならない。何度か医療過誤で保険を使うと掛金が莫大に跳ね上がり、収入以上の掛け金を払う羽目になる。そして、自分の保険の掛け金をかけられなくなった医師は、医師という職業を続けることができなくなり、学生時代の借金は払えず、自己破産に至る。米国には元医師というタクシー運転手もいる。医師免許は有効だが、保険の掛け金が払えず、医師を続けることができないからという。
 
これでは、学生は金銭的な不安から医師を職業として選ばず、他のより収入の多い専門を選ぶことになる。また、莫大な学生時代のローンを払うために、医師になっても稼げる分野の専門を選ばざるを得ず、すぐに金にならない医療研究の分野に進める有能な医師がいないという状況を作り出している。結果として社会の医療の進歩に貢献せず、癌治療の研究が進まなければ、人々が医療の恩恵を受けることもできなくなる。
 

私立New York大学医学部の学生全員(1学年約100人)に、給付型奨学金を出そうとすると、$6億(約660億円)の原資が必要だ。この時点で既に$4.5億以上の寄付を集めており、後$1.5億ほど集めれば目標は達成できる。最大の$1億を寄付した人はホームセンターHome Depotの創業者夫妻(Mr. Kenneth Langone &Mrs. Elaine Langone)という。我々のふるさと納税の寄付とは桁違いの金額で、意図するところもかなり違う。さすが寄付の文化が根付いた米国という感じだ。

 
それにしても、我が国では、早稲田大学が一番給付型奨学金を出している私立大学となっているが、全学部合わせて約5,000人に平均60万円というから、New York大学医学部学生全員に600万円とは規模が違う。でも、奨学金は、今後給付型を確実に増やさないと、日本はいずれアメリカみたいになってしまうだろう。我が国は、学生に借金を増やさせず、勉強することができる環境を整える必要がある。