アミのひとり言

事務所のアイドル犬アミのひとり言です。

入れ墨彫り師判決

大阪・吹田市の自宅で女性客3人に入れ墨を施した男性彫師(29才)が、医師法違反で罰金15万円の判決を受けた(大阪地裁判決平成29.9.27)。彼は医師免許がないのに、2014年7月~2015年3月、入れ墨を彫る施術をして報酬を得ていたとして、20158月に略式起訴され、その後に罰金30万円の略式命令を受けたが、納付を拒否し、裁判に訴えていた。今回の有罪判決を受け、即日控訴したという。
 
判決では、入れ墨は医療行為に当たるとして、皮膚障害やアレルギー反応を引き起こす危険性があり、医学的な知識や技能が不可欠であると指摘、医師が行わなければ、保健衛生上の危害を生じる危険性があると判断された。皮膚に針を刺して色素を入れ、文字や模様を描く入れ墨(tatoo)は、皮膚科の医者のような医療知識を持った専門家が行うのでなければ、やはり感染症などの被害が出る恐れがあり、医師免許が必要だろう。少なくとも、その道の専門家として国家が認定した者が施術するのでなければ、国民は心配だ。
 
しかし、現実に皮膚科の医者で入れ墨を業として行っている者はいないらしい。全国に約3,000人ほどいると言われている彫師は、今回の判決を機に全員捕まる可能性がある。今回有罪判決を受けた彫師は、高校を出て独学でこの仕事を覚え、22才の時から5年間はこの仕事をしてきたから、優に1,000人以上に入れ墨を施術してきている。たまたま、一人も施術後に体調不良を訴えてきた人はいないというが、皮膚に針を突き刺して色素を沈着させる行為は、細菌に感染したり、血管を傷つけたりする危険があり、職業選択の自由だとしてほっておいていいものではないというのも正論だ。
 
Tatoo is an art(刺青は芸術)という主張はわからなくもない。医師免許が必要としても、医師に芸術の素養がなければ入れ墨はできない。芸大卒業生が医者になれば入れ墨彫師に適任だが、医者の職業の方が収入がいいので、現実には彫師の仕事はしないだろう。米国では許可制にしているようだが、日本でも法整備が必要なのかもしれない。
 
現実に入れ墨をして後悔をしている人も沢山いるときく。後で取ろうとしてもなかなか消すことができないからだ。しかも、我が国では入れ墨の印象が悪すぎる。ヤクザがほとんど入れ墨をしているからだ。ヤクザから足を洗ったけれど入れ墨が残ってまともな職業につけないという話もきく。最高裁で入れ墨が医療行為であると最終認定された暁には、国内約3,000人の彫師は、全員仕事ができなくなる。
 
違法彫師を全員捕まえてしまえば、入れ墨ができなくなり、ヤクザの数も減るかもしれない。一方で若者の間に広まるファッションとしての刺青に歯止めがかかっていい結果になる可能性もある。国民生活センターには、皮膚に針を刺して色素を入れて健康被害を受けたという相談が後を絶たないからだ。