アミのひとり言

事務所のアイドル犬アミのひとり言です。

暴力団トップに死刑判決

 北九州市を拠点とする特定危険指定暴力団工藤会トップの総裁(野村悟、74才)に、24日、福岡地裁は死刑を言い渡した。No. 2の工藤会会長(田上不美夫、65才)にも、求刑通り無期懲役が言い渡された。広く福岡・長崎・山口にタリバンのような徴税システムを導入し「みかじめ料」として上納金を強要する日本一凶悪凶暴なテロ組織。福岡県警が束になってかかってきても一切恐れず、「向こうも戦争のつもりなら、受けて立つ」と、逆に県警を脅迫するかのように立ち向かった。これはまるで日本のアルカイーダだ。

 

 上納金徴収に従わない者には建物に放火、手投げ弾、攻撃型手榴弾、散弾銃、時限爆弾、銃撃と何でもやって相手を恐怖に陥れる。北九州市では、工藤会の銃撃があちこちできかれ、無法地帯となっていた。巨大港湾工事をめぐる利権をめぐって、工藤会に協力しなかった元漁業組合長が射殺された事件や、その孫の歯科医師刺傷事件など、4件の凶悪事件では、実行犯の手先は逮捕されたけれど、首謀者を捕まえることができなかった。

 

 工藤会壊滅を狙って活躍していた元福岡県警警部が銃撃された事件を機に、警察はトップの逮捕に向けて慎重に準備を進めた。その後も看護師銃撃事件などがあり、ついに2014年9月、警察は頂上作戦を実行に移し、工藤会No. 1 & No. 2の総裁・会長を逮捕するに至った。殺人と組織犯罪処罰法違反などの罪で起訴され、実行犯らにトップが指揮や命令をしたか争われたこれらの事件は、トップの指示がなければ起こりえなかったと、間接証拠で立証したのだ。野村は「俺は知らない。総裁は単なる飾りだ」などと反論するも、裁判長には受け入れられなかった。

 

 元漁業組合長を襲撃して、何も奪っていない実行犯は、襲撃によりなんら利益を得ていない。しかも捕まった実行犯は、頑なに野村の指示があったとも認めない。だが裁判官は、工藤会の上位下達の組織性から、トップの関与がなかった筈はない、と結論付けた。従来は、民事訴訟で、暴力団トップの使用者責任が認められ、部下に賠償能力がない場合、トップが数億円の損害賠償を命じられるというだけだったが、今後はトップの刑事責任も問われることになり、他の暴力団も少しは慎重になるのではないか。所詮、他人からとった金の一部を返却させられても、また頑張れば取り返せると思うだろうが、トップが、自分の死刑がかかっているとなれば、暴力団の活動も変わるだろう。少なくとも工藤会のような凶暴な暴力団は、現れにくいのではないか。

 

 工藤会でトップの指示は絶対だ。指示に従わない選択肢はない。元福岡県警警部銃撃事件や歯科医師刺傷事件の共犯として逮捕され、懲役18年8カ月の判決を受け服役中の元組員(42才)は報復を覚悟の上、裁判の証人になり、法廷で「(自分たち組員を)道具としか考えていない、歯車の一つとして上位者の意のままに使われた」と工藤会を批判した。しかし、彼とて組幹部の指示はあったが、野村から直接指示を受けていない。裁判長は「組織の指揮命令系統に従い、各人が細分化された役割に沿って実行に移した」と組織性を認定、総裁ら上層部の指示があったと考えるのが自然であると結論づけて、トップの野村に死刑を言い渡した。