アミのひとり言

事務所のアイドル犬アミのひとり言です。

学生ローンに米国版徳政令

 米民主党のBiden大統領が、選挙公約で約束した学生ローンの債務免除(債権放棄)が8月24日発表された。約4,300万人に恩恵をもたらすと試算されている。米国人が抱える借金は$16兆というから2,200兆円以上。主な内訳は、住宅ローン、学生ローン、自動車ローン、credit card loanのようだが、この中の学生ローンは$1.75兆(245兆円)に上る。

 

 統計上、大卒以上の所得は平均$8万(1,120万円)に対して、高卒の所得は平均$4.4万(615万円)と極端に低いから、学生は大卒の資格を取るため、学生ローンを組んででも大学に行こうとする。New York州の公立大学授業料は、年間$6,000(85万円)程度と日本で考えても受け入れられそうだが、私立大学は$3~4万(400~550万円)というから、裕福な家庭の子弟でなければ4年間払い続けるのは難しい。自宅から通えるならまだしも、下宿していくとなれば住居費・生活費もかかり、いくらアルバイトをしてもローンを組まないとやっていけない。その連邦政府の学生ローン(金利ゼロ)残高が245兆円になるということだ。

 

 Biden大統領が発表した今回の学生ローン徳政令(student loan forgiveness)の内容は、高所得者を除外し、原則一律一人$1万(140万円)返済を免除するというもの。低所得層(Pell Grant対象者、戦死した軍人の子弟等)には一人$2万(280万円)の返済が免除される。徳政令の対象外となる高所得者とは年収$12.5万(1750万円)又は夫婦で年収$25万(3,500万円)以上ある者。これにより恩恵を被る者は4,300万人となり、そのうち2,000万人はローン残高が$1万なので学生ローンがなくなるという。

 

 これからはロボットが活躍する世の中になるので、社会に出る前に大学で勉強してほしいというのが国の希望のようだが、授業料がこうも高くては裕福な家庭の子弟でなければ、私立の大学にはとてもいけない。このような徳政令を出す(今回の場合、連邦政府の出費は$3,000億≒42兆円)くらいなら、政府が大学に助成金を増やして授業料を下げさせることもできると思うが、政府が金を出せば口も出すから、大学の自治でどんどん授業料を上げるのだろう。

 

 大学卒業時に学生ローンを抱えている学生の平均ローン残高は、$2.5万(350万円)、その後返済を続けて残高$1万以下になった人は、幸運にも残りすべてが免除となる。残高$2.5万の人でも、借金が$1万減るのは喜ばしい。残高$5万以上という人もたくさんおり、前回の大統領選挙に出たElizabeth Warren上院議員などは、債務免除の額を一人上限$5万にすべきと主張しているくらいだから、$1万では焼け石に水という人も多い。反対に、苦労してやっと返済を済ませたという人にとっては、許しがたい不平等だという意見も出ているが、これは、自分は恩赦の恩恵を受けなかったと文句を言う受刑者のようで、しょうがないだろう。最大の問題は今回の徳政令で、ローンが$1万減ったけど、大学を中退したという人たちだ。高額の授業料支払いは4年間続く。途中で経済的理由から、勉学を諦めざるを得なかった人たちも、ローン残高を返済しながら、低収入の仕事を続けている生きている(人種的に黒人が多い)。不平等はいつの世も解消しないようだ。