性同一性障害の人が、戸籍の性別を変更するのに、生殖機能がないことを要件とする現行の性同一性障害特例法は憲法違反だ、との判断が、昨日の最高裁大法廷で、15人全員一致で決定となった。つい4年前の最高裁小法廷は合憲としていたので、わずか4年で国際標準に訂正した形だ。
生まれつきの性と自認する性が異なる性同一性障害者が、戸籍の性別を変更するには、2004年施行の性同一性障害特例法第3条(性別の取扱いの変更の審判)1項により、次の5点すべてを満たしていなければならないと定められている。
①18才以上
②未婚であること
③未成年の子がいないこと
④生殖腺がない又は生殖腺の機能を永続的に欠く状態にあること(生殖不能手術=男
性は精巣、女性は子宮嫡出)
⑤その身体について他の性別に係る身体の性器に係る部分に近似する外観を備えてい
ること(外観手術)
今回訴えている原告(申立人)は、出生時の性は男性だが、女性自認、女性として暮らしている「生物学的男性」だ。戸籍の性を変更したいとして裁判に訴えるも、一審の岡山家裁、二審の広島高裁ともに④⑤の条件を満たしていないとして、性別変更は認められず、最高裁に特別抗告していた。④生殖不能手術、⑤外見手術共に体の危険を伴う外科手術を強制するのは、「個人の尊重、生命、自由及び幸福追求の権利(13条)」や「法の下の平等(14条)」を定めた憲法に違反すると主張した。
病気の治療として必要な外科手術ではなく、性同一性障害特例法の生殖能力喪失要件を充たすためだけに、強度な身体的侵襲である手術を受けさせるのは、憲法の趣旨に反するという最高裁決定は妥当な判断だ。最高裁は「外観要件」に関して判断を下さなかったが、この点に関しては広島高裁に差し戻し、審理を尽くさせるとした。
世界の趨勢は、生殖能力喪失要件も外観要件もなく、子なし要件や未婚要件すらないで性別変更を認めている国がほとんどであり、日本だけが特殊な条件を課していても、訪日外国人の中に多様な人々がいるわけだから、やはり国際標準に合わすのが妥当な線だと思う。