アミのひとり言

事務所のアイドル犬アミのひとり言です。

ラテン式遵法精神

法律を守るゲルマンと法律の趣旨を理解するラテンはどちらが賢いか。強風で信号機が壊れてぶら下がっていた。電気系統も壊れてしまい一方はずっと赤、他方はずっと緑となっていた。ドイツ人は何時間も赤信号で待つ。絶対に赤信号で直進しないので、しばらく待ってから逆戻りして別の道を探す。イタリア人は横から自動車が来ないことを確認して赤信号を渡る。ドイツ人にとっては悪法も壊れた信号も遵守すべき対象なのか、ただひたすらソクラテスの時代から「悪法も法なり」と家で教えられているのだろうか。イタリア人は何のための信号か交通信号の趣旨を考える。事故が起こらないように一方を赤とし他方を緑にしたのであるから、事故が起こり得ないことを確認したら赤でも通過していいのである。ドイツ人は信号が何のためにあるのか思慮することは許されず、法に基づく信号が先にあるとでも信じているようだ。イタリア駐在が終わって帰国数日前に自動車を知り合いに売却した時のこと、ACI(日本のJAFに相当)事務所で既婚者は夫婦でサインしないと名義書換させてくれないと言われた。離婚しようとする者が先に自分名義の家とか自動車を勝手に処分して財産を隠してしまうのを防ぐために、自分個人名義の自動車といえども既婚者は配偶者のサインがなければ名義を他人に移せないことになっている。ミラノ市外にあり、ようやく苦労して見つけて来た事務所なのにまた別の日に夫婦で来なければならないというのは手間だし、帰国間際で面倒だから、思いつきで「妻は重病で一刻も早く自動車を売却して日本につれて帰らなければならず、本来ならまだ売りたくもない自動車を売る決断をしたのだ。重病の妻をここまで連れてくるのはとてもできない」とでたらめを説明したらよく納得してくれて特例ですぐに名義変更してくれた。この制度も趣旨は離婚の前の財産処分防止だから、説明の状況から重病の妻を日本につれて帰ろうとしている真面目そうな東洋人が離婚を企んでいることはあり得ないと納得して柔軟に対応してくれた多分にラテン的計らいであろう。ドイツで同じような説明をしてもまずは規則があると受け入れられないだろうし、恐らく日本でも受け入れてもらえないであろう。ルネッサンス以来イタリアは大変人間重視になったものである。