一人はリビア国民を二分して敵対勢力を殺戮しているカダフィ（Muammar Gaddafi）、もう一人が先週米軍の奇襲攻撃を受けてパキスタンで殺害されたビンラデン（Osama bin Laden）。両者とも存命中に憎い米国に甚大な損害を与えるという目的は達成したようだ。1988年12月フランクフルト→ロンドン→ニューヨークのパンアメリカン機にフランクフルトで乗った男がいた。リビア情報機関に所属するAl-Megrahiはこの時プラスチック製時限爆弾をスーツケースに入れ最終仕向地ニューヨークまでチェックインして、自分はロンドン空港で行方不明になった。ロンドンを定刻30分遅れの18:25暗闇の中離陸したジャンボジェットPan Am 103便は乗員乗客260人（７割以上はアメリカ人）と共にスコットランドのLockerbie上空で爆破され空中分解、全員死亡。おまけに地上にいた住民10名も巻添えにあい死亡した。アメリカは時間をかけてリビア人爆破犯を特定し、国連にも圧力をかけた結果、カダフィは1999年Al-Megrahiを国連に引き渡し、この男は2001年スコットランドで終身刑の判決を受けたが、被害に遭ったPan Amは遺族への補償、飛行機の損失のほか信頼性喪失という風評被害で事故後間もなく経営破綻、1991年103便の後を追うように空中分解してしまった。旅客と荷物一致の原則に違反し、荷物検査を怠った責任を問われた。ついでにPan Amの保険を引き受けていた保険会社も飛行機と270個の命を全て一度に補償するという想定外の事故に倒産を余儀なくされた。ニューヨーク・セントラル駅ビルの最上階にあって、市内のほぼどこからでも見ることができた「Pan Am」という看板が消えてからもう20年になる。「Pan Am」の看板はマンハッタンのシンボルと思っていたが、アメリカ最大の航空会社を消滅させた点でカダフィは目的を達成した。
そしてEmpire Stateビル（102階）よりも高い二棟の世界貿易センタービル（110階）を2001年一瞬にして消滅させたビンラデンも己の目的を達成した。世界一の軍事超大国がタリバンという取るに足らないはずのテロ組織にいとも簡単に本土攻撃をされ、ニューヨークのシンボルをつぶされて火の海にさせられた。この男は1957年にサウジアラビアで生まれた大富豪の息子、身長194cm。アメリカ同時多発テロの１年前（2000年）に５人目の妻Al-Sadah（当時18才のイエメン人学生）と結婚。米同時テロ成功を祝福するかのようにビンラデンとの間に2001年女の子が生まれた。先週米特殊部隊がヘリコプター４機で暗闇の中を急襲したパキスタンAbbottabadのビンラデン隠れ家で足を撃たれた時Al-Sadahは29才。彼女の学校の先生が世界一のテロリストに紹介したそうだ。ビンラデンは背が高いので髭を染めていなくても米特殊部隊員にはすぐわかる。EKIA = Enemy Killed In Action（敵殺害完了） 頭を撃たれたテロリストの遺体は袋に入れて重しを付けられねんごろに海底に沈められた。水葬という。享年54才。でもカダフィはまだ死んでいない。
