アミのひとり言

事務所のアイドル犬アミのひとり言です。

リビアを助けてシリアを助けないNATO

リビア(人口640万)もシリア(人口2,200万)も独裁者による極端な反体制派国民の弾圧・虐殺を繰り返しているが、リビアについては国連決議に基づき国際社会の武力協力が実現して独裁者一派の完全排除が目前に迫ってきた。しかし、一方のシリアについては国際社会の武力支援は遅々として進んでいない。なぜリビア国民は保護の価値があるがシリア国民にはそれがないのか。理由は資源を持てる国と持たない国の違いだろう。リビアはアフリカ最大の産油国反政府運動が始まる前の産出量は日量170万バレル、約400億ドルの国家収入をもたらしていた。現行の1バレル=100ドルで計算すると約600億ドル(4.5兆円)の収入になる。これだけの財産を持った国の人々は英仏米伊の国家予算を使って空爆による後方支援をする価値があるからだ。カダフィ一派を追い出した国民評議会は近々原油生産を再開するがもちろんお世話になった英仏米伊には優先的に石油を供給する。逆に7月の段階でもなおカダフィ派に武器を他国経由で内密に供給していた中国などは対象外となる。ロシアも最後までカダフィに気を使って国民評議会による新政権を認めなかったから中国並みの扱いとなるだろう。リビアの一般国民を救うという大義名分はあっても腹のうちはリビアからどんな見返りを期待できるかによって軍事介入が決められる。リビアよりはるかに人口の多いシリアで既に2,300~3,000人以上の平和的デモをしていた国民が二世独裁者(Bashar al-Assad)により虐殺されているが、資源のないシリアの国民を救うための軍事介入はどの国も言い出さない。独裁者を追い出しても見返りが何もないからだ。ということは、民主主義の宣教師面をしている英仏米伊は本来は宣教師ではなく、単に石油が欲しいだけか。
シリアは国民の7割前後がイスラムスンニ派(穏健派)で、独裁者一派は人口の1割程度のイスラム教アラウィ派に属する。イスラム教の二大勢力は言わずもがなスンニ派シーア派(過激派)。イランはシーア派で、原発名目で核兵器も製造していると疑われている超過激派だ。シーア派スンニ派犬猿の仲、常に対立している。シリア国内でスンニ派とアラウィ派も対立しており、シーア派とアラウィ派も元々相いれない教義の派閥だが、イラン・シーア派にとってより憎いのは大きな派閥であるスンニ派だから、イランはスンニ派と対立するアラウィ派(シリアの独裁者一派)を支援している。「敵(スンニ派)の敵(アラウィ派)は味方」の公式が妥当し、イラン政権とシリアの独裁者政権は戦略的同盟関係にある。民主主義を擁護したいとする英仏米伊がシリアの独裁者に対して国民の弾圧をやめよ、退陣せよと口先介入しても、石油収入の豊富なイランがシリア独裁者政権に武器をどんどん供給するからアサド大統領はやめる気がない。資源を持たざる国の国民にとって「アラブの春」は甚大な犠牲と長い闘争の末にやっと迎えるものなのかもしれない。