アミのひとり言

事務所のアイドル犬アミのひとり言です。

負傷して国外脱出の大統領一族

イエメン(Yemen、人口2,360万)の大統領サレハ(Ali Abdullah Saleh、65才)は1978年以来33年間このサウジアラビアの南に位置する国を独裁的に治めてきたが、4日ついに一族31人を引き連れて隣国サウジアラビアに逃亡した。3日の反体制派部族による大統領府攻撃によって大統領、首相、副首相、国会議長など政府高官7人が負傷、全員サウジアラビアに治療と称して出国した。この攻撃で護衛7人は死亡、サレハは頭部に負傷、胸に木片が刺さり、木片で手足を固定して飛行機に乗せられたとの情報もある。大統領府攻撃の後テレビで国民に何かを訴える予定だったがこんな姿を映すわけにもいかず、出国前に国営ラジオで2分足らずの録音による音声を流しただけだった。その無気力な声を聞いて反体制派国民は大歓声を上げて喜びあったと報道されている。もともと独裁者サレハは民主的な発想の男ではないが、アメリカはテロリストを弾圧するためにこれまで彼を利用してきたため、経済援助がかすがいとなり、アメリカとは良好な関係を維持してきた。米国とは協調の関係を対外的にアピールして国内では貧富の差には目をつむり自己と一族・腹心の部下の汚職にまみれた国家を築き上げてきたのだ。チュニジア・エジプトの革命に触発された若者が1月以降イエメンでも平和的反政府デモを繰り広げてきたが、これをサレハは徹底的に弾圧してきた。デモ参加者を毎回十数人ずつだけ撃ち殺し、それ以上の負傷者を出す。負傷者は指定の病院で治療して入院が必要な者については夜間軍隊が出動して全員を撃ち殺す。この方法だと公表されるデモの死者数があまり増えないのだそうだ。過去10日でデモの死者170人くらいと公表されているが病院で入院中に行方不明になった者の数は公表の死者数をはるかに上回っているとみられている。目には目を、歯には歯をだから、サレハが負傷して入院中に反政府派が病院に殺しに来る可能性あり、国外に出なければならなかった。このような独裁者をもはや米国も支持できなくなったからオバマ大統領もサレハにすぐに大統領をやめて国外に出ろと4月から忠告していた。しかし権力の味をしめた男は米国の援助がなくなるとわかってもなかなかその権力を他人に譲りたくないようだ。同じ親米派であるサウジアラビアの国王もサレハに平和的デモ隊に発砲するなと忠告してきたが、サレハの反撃がエスカレートして第二のカダフィのようにイエメンを内戦に持っていこうとしたため、国王もオバマさんと歩調を合わせて国を出ろと要求していた。今回治療のためとして一族31人も含めて大人数の受入れを許可したからには二度と国に戻るなとサウジ国王に告げられているはずであり、これは客観的に見て「亡命」だろう。イエメン大統領の権限は腹心の部下たる副大統領(Abed Rabbo Mansour Hadi)に委譲した形になっているが、今後反体制派有力部族の長老(Sadeq al-Ahmar)が正式の選挙を経て民主的イエメンの指導者になるのではなかろうか。女性の結婚年齢を9才以上としているイスラム法も無視するイエメンでは、8才の少女の離婚などが裁判で認められたりしている。新政権は人権問題にも真剣に取り組んでもらう必要がある。