アミのひとり言

事務所のアイドル犬アミのひとり言です。

生まれたての国「南スーダン」

7月9日アフリカ最大の面積を誇るスーダンの南部が「南スーダン共和国」として独立した。ほぼ半世紀に渡り南北内戦で150万人以上の死者を出した同地域だが、2005年の和平合意を経て、今年1月に行われた住民投票(99%が独立賛成派)で独立を決定し、アフリカ系キリスト教徒を中心とするスーダン南部の住民たちは、アフリカ54番目の国家として悲願の独立を手にした。近く国連加盟も認められ、2002年独立を果たした東チモールに次いで193番目の加盟国となる。ここまで来るには長期に渡る西部のダルフール(Darfur)地方におけるアラブ系住民(政府系、イスラム系)による非アラブ系住民(非イスラム系)の人種大量殺害(民族浄化、Genocide、2003年以降だけで40万人以上殺害された)と数百万人の難民発生という犠牲を伴う過酷な年月を要した。今回独立した南スーダンキリスト教系住民等非イスラム系がほとんど、それに対し残ったスーダンはほとんどがイスラム系住民というから、イスラム対非イスラム(アラブ対非アラブ)の対立だ。しかもスーダンの大統領バシル(Omar al-Bashir)には人種大量殺害の罪で国際刑事裁判所から逮捕状が出ている。米国の新聞Washington Postによる世界最悪の独裁者ランキングでここ数年常に1位と2位を争っている男がこのバシルと北朝鮮金正日。バシルはDarfurの40万人を含めて150万人ほど殺害したと言われている。その大量虐殺の事実は「ぞっとさせられるぐらい」に凄惨な人道的悲劇とされる。この人物が7月9日の南スーダン独立記念式典に来賓の一人として現れ南スーダンの独立を祝福したというからただ事ではない。もともとスーダンにあった石油の75%は南スーダン側にあり、7月9日以後のスーダンには25%しかない。人口比は南スーダン(850万):スーダン(3,300万)=約1:4、一人当たりの石油に換算すると南スーダンスーダン=12:1と圧倒的に南スーダンに有利だ。だからこそバシルは自国民をいくら殺しても南スーダンを自国に取り込んだ状態を一日でも長く継続したかったのだ。しかし、南スーダンに港はなく、紅海に至る長距離パイプラインはスーダンを通っているから、石油収入は両国で折半となるらしい。今回の南部独立により国土面積は南スーダン60万km2(スペイン・ポルトガルの合計より広い)、スーダン190万km2となる。長い内戦で疲弊した南スーダンの現状はかなり厳しい。13才以下で小学校に通っている子供は非常に少ない。女性の84%は文盲だ。新生児の死亡率世界第一位。これまでのスーダンの債務を二国間でどのように分担するかの問題も未解決。二国間の国境もこれから確定しなければならない。
東ティモールが2002年やっと独立したが、インドネシア占領下で殺された東ティモール人は20万人に登ると言われていた。独立を勝ち取るには先人の膨大な犠牲があるということを胸に刻んで我々は独立を喜ぶべきなのだ。