アミのひとり言

事務所のアイドル犬アミのひとり言です。

預言者を冒涜する言論の自由

イスラム教の預言者Muhammadの風刺画などを週刊誌に載せていたパリの出版社Charlie Hebdoの本社が、7イスラム教過激派の兄弟に襲われ、編集長(Mr. Stephane Charbonnier47)を含む12名が犠牲になった。銃撃犯兄弟はその後パリ近郊の印刷所に人質を取って立てこもったが、フランス特殊部隊の急襲で射殺された。出版社襲撃事件を援護射撃するように、8日パリ市内で女性警官を撃ち殺した男が、その後ユダヤ系食料品店に立てこもって抵抗したが、これも同じく特殊部隊の急襲で射殺され、そこでは、人質4人が犠牲になっていたので、一連の事件の死者は犯人3人以外17名、負傷者は30名以上になる。
 
 出版社襲撃犯の兄弟は元々Algeria移民の息子(Cherif Kouachi32才とSaid Kouachi34才)で、幼少期に両親と死別している。未成年の頃から大麻吸引、違法薬物の売買など繰り返していて、弟は2008年、フランス人をイラクアルカイダ系分派組織に送り込んだとして有罪判決を受けている。この兄弟は2011年にアルカイダ系組織AQAPから資金提供を得てイエメンに行き、そこで数カ月間、射撃などの戦闘訓練軍事訓練を受けた。一人はシリアに渡航した形跡もあり、二人とも米政府の入国禁止リストに入っていた。

 女性警察官を殺害した黒人の男(Amedy Coulibaly32)はKouachi兄弟の友達、弟とは服役中に刑務所で知り合った仲だ。Senegal移民の息子で、窃盗、麻薬売買など悪事ばかり働いていたならず者、犯行の数か月前に出所したばかりだった。敬虔なイスラム教徒とは、無関係。ユダヤ系食料品店に立てこもって、報道関係者にKouachi兄弟の開放を要求していた。この男の妻ないし同居の女Hayat26才)はKouachi弟の妻と友達で、同じAlgeria移民の子、事件の後シリアに逃亡した可能性ありと報道されている。
 
 標的になった風刺週刊誌は、イスラム教の預言者Muhammadの戯画を載せたものだが、この週刊誌は風刺が売り物だから、キリスト教も風刺の対象にしている。聖母マリアが豚の顔をした御子イエスを出産した様子なども載せたりしており、イスラム教だけを標的にしてはいない。信教の自由もあるが言論の自由もあるわけで、イスラム教徒にとっても、ならず者のエセ・イスラム過激派は迷惑千万な存在だ。
 
 イスラム国に走る者といい、ヨーロッパ社会が移民、移民の子弟に公平な学問、就職の機会を与えないことが、今回の事件の背景にあるように思う。預言者Muhammad様に命を捧げますというような、敬虔なイスラム教徒が事件を起こしているのではない。歴然と存在する経済格差に疑問を持つ若者が、不満のはけ口としてイスラム過激派に走っているのではないか。ヨーロッパには移民への差別、ジプシー(Roma)への差別など、異質の少数派を排斥する伝統がある。今回の悲惨な事件を機に、フランスではますます移民排斥運動が広がることが予想される。翻って人口減少の続く我が国で、移民を積極的に受け入れるべきかどうか、よくよく考えなければならないと知らされる事件であった。