アミのひとり言

事務所のアイドル犬アミのひとり言です。

原油下がってスイスフラン上がる

しばらく$100/barrel前後と高かった原油$50/barrel割れに下がったと思うと、今度はスイスフランが暴騰した。3日前115円前後だったスイスフランが今は137円に19%値上がりした。株価も同じだが、上がったものはやがて下がり、下がったものはやがて上がる。その時期と上げ幅を教えてくれる預言者はこの世におらず、関わりを持たなければ大した問題にはならないが、業界に身を置く人たちには大変な環境である。変化の時期こそ絶好のチャンスとばかり、千載一遇のチャンスを狙うと大抵失敗するものだ。
 
僕が就職した1973年頃の原油価格は、せいぜい$3/barrel程度だった。それが、その年の秋に第四次中東戦争勃発、オイルショックが起こり、一気に70%上がって$5/barrelになったと思ったら、翌1974年には$11/barrelに跳ね上がった。しばらく$20/barrel前後の相場の時期が続いていたが、2000$302004$402005$502006$602007$70と徐々に上がってきて、2008年には一時$147の史上最高値を付けた。その後、2011-2014年は$90$100で推移してきたものの、今月になって$50/barrel割れの相場が続いている。
 
もともと「黒い水」と言われて、何の役にも立たなかったものを、米欧の大手資本が採掘して、現地に$1/barrel159 litters)程の「迷惑料」を払っていたのだから、適正な価格など存在しない。最近の原油価格下落の主な要因として、中国をはじめとする消費国の大幅需要減と、原油輸入大国米国の頁岩ガス/オイル(shale gas/oil)採掘増が言われている。全世界の原油産出量の約10%900barrel/日)を輸入していた米国が、頁岩ガス/オイルの増産で実質的に輸入の必要がなくなるので、市場に原油が余るというのだ。
 
産出国のOPECは、単価下落で国家収入が大幅に減っている上に、更に生産調整して産出量を減らせば、自国の経営が成り立たないから、増産こそすれ、減産はできない。供給が増えて、需要が減るなら、経済の法則により、価格が下落する。国家収入の多くの部分を原油輸出に頼っているロシアにとっても、原油価格の下落は大きな打撃になっている。クリミア半島ウクライナから奪った天罰なのかもしれない。こんな環境の中、ロシアは原油増産するというから、ますます原油相場は下がって、ロシア経済は疲弊するだろう。
 
自国の通貨の価値がどんどん上がれば、その国は理論上豊かになるはずだが、スイスフランの急上昇は、過去の円高で日本の製造業が経験したのと同じ苦しみを味わうことになる。スイスGDP3分の1を占める輸出品目の主なものは時計、精密機械、化学、製薬、宝飾品などだが、大きな打撃を受けることになる。一大産業でもある観光も通貨高により外国人観光客が激減して、国内の雇用に大きく影響するはずだ。Euroを採用していればこのような問題はなかったのだろうが、通貨発行益を狙うのが国家目標であるから、スイスフランなしのスイスは考えられない。原油価格が下がりすぎて産油国が滅び、自国通貨が上がりすぎてスイスが滅びる、ということにならないことを祈るのみだ。