アミのひとり言

事務所のアイドル犬アミのひとり言です。

地震を予知できなかった科学者は有罪か

イタリア中部ラクイラ(L'Aquila)で2009年4月6日午前3時32分にマグニチュード(mag.)6.3、死者300人以上、負傷者1,600人以上を出した地震を予知できなかったとして、科学者ら7人が過失致死罪に問われている裁判の初公判が始まった。起訴されているのは災害などの危険性を検討する委員会のメンバーで、6人が国立地球物理学火山学研究所(INGV:Istituto Nazionale di Geofisica e Vulcanologia)の専門家、1人は防災当局職員。検察は、同委員会が地震の危険性について「不正確、不完全で一貫性のない」情報を出していたことが被害拡大につながったと主張して、市に5,000万ユーロ(約50億円)の賠償を求めている。ラクイラ地震(日本では「イタリア中部地震」)は本震の4ヶ月前の2008年12月14日(mag.1.8)から断続的に始まり、余震は昨2010年5月まで続いた。本震の約1週間前3月29日にmag.3.9の地震があった。日本のような耐震性の高い建物は少なくこの日の地震でも建物の被害は発生し、何にも地震に慣れていないイタリア人は家の中で夜を過ごすことを恐れて野外にテントを張って過ごす者もいた。INGVの会長Dr. Enzo Boschi(Bologna大学教授)はこれ以上の地震を心配する必要はない、地震は収束に向かっていると発言し人々に安心して家の中で寝るように勧めた。ところが3月29日のmag.3.9の地震の後に24時間以内に大地震が来ると予測し、INGVに伝えた研究者がいた。国立天体物理学研究所(INAF:Istituto Nazionale di Astrofisica)のGiampaolo Giulianiはトルコの地震等を研究する中で地中のラドンガス濃度が上がると6-24時間後に地震が発生するという事実をつきとめた。ラドンガス濃度を計測する独自の装置を異なる地中5ヵ所に埋めて地震発生の場所と時間を予知できるという。彼の巨大地震予知がテレビでも紹介され多くの人々が3月29日の夜野外テントで一夜を過ごしたという。しかし3月30日が過ぎてもGiuliani氏が予測した大規模地震が発生しなかったためINGVは彼をほら吹きと決めつけ今後人心を惑わすような発表をするなとかん口令を命じた。そうこうしているうちに4月4日にmag.5.9の大きな地震が発生した。INGVは緊急の会合を招集し怯えている人々を落ち着かせるため、これ以上大きな地震はもう発生しないと再度公表した。しかし4月5日Giuliani氏のラドンガス濃度測定器が再度急上昇した。午前11時に一度大きく振れ午後5時47分に二度目の大きな振れが観測されたので彼は今度は間違いなくもっと大きな地震が来ると判断し、家の中にいるのは危険なので夜は外のテントで寝ると家族(妻と5人の子供)共々テントに避難したから、翌6日午前3時32分に本当に発生したmag.6.3の地震の被害を免れた。INGVにラドン異常の報告を一切するなと言われていたため、自身の親しい友人・親戚・知り合いにだけ5日の夜野外のテントで寝るようにと伝えた。彼を信じた多くの友人たちは忠告に従って野外テントに避難したため翌日早朝の地震で難を逃れたが、彼の忠告を聞く機会を与えられなかった人々や忠告を無視した知り合いは結果的に死者・負傷者となった。預言者ほどの正確な地震予知ではないにしろ、Giuliani氏が予知できたのに彼に発言の機会を与えず、しかもこれ以上の大きな地震は発生しないと再三断定し住民の大惨事を招いたDr. BoschiらINGVの科学者の行為は過失致死罪に相当するというものだがこの裁判の行方が楽しみだ。