アミのひとり言

事務所のアイドル犬アミのひとり言です。

スペインの不動産バブル崩壊

2000年のユーロ導入から2006/2007年にかけてスペイン経済は不動産・建設ブームで高度成長を経験する。1990-1995年頃人口3,800-3,900万人だった人口は今や4,600万人に膨れ上がり、不動産バブル絶頂時には、住宅着工件数が独仏英3カ国の合計をも上回った。(スペインの人口は、3カ国合計の1/5)ユーロ導入により風光明媚で暖かく、不動産価格が相対的に安かったスペインの沿岸は、北欧英独米等の金持ちや中産階級の別荘ブームを巻き起こした。ところが2008年のリーマンショックを機に世界の金融機関がスペインから資金を引き揚げ始め、不動産価格の暴落によって残ったスペインの金融機関の貸出債権が不良債権になってしまったのだ。スペインNo.4の大手銀行Bankiaが先月190億ユーロ(1.9兆円)の金融支援を政府に依頼し、国有化された。不動産価格は今なお底なしに下がり続けており最終的に救済に必要な公的資金がこの何倍になるか予想すらできない。2010年負債総額20億ユーロ(2,000億円)で倒産したカトリック系貯蓄金庫Cajasur(現在中央銀行の管理下)とかBankiaの国有化は来る「スペイン倒産」のほんの序曲でしかない。スペインの金融機関の国内貸出債権に占める住宅・建設・不動産関連は直近の資料で58%であるから、スペイン大手銀行No.1・No.2であるSantander-HCやBBVAの不動産関連不良債権(少なく見積もっても10-15%とみられている)が表面化する頃にはスペインのユーロ離脱が現実になるかもしれない。スペイン政府は今週、EUユーロ圏諸国に対し、とりあえず620億ユーロ(約6.2兆円)の銀行支援を要請した。3倍から4倍に膨れ上がった不動産価格が1/3から1/4に下がり元の黙阿弥になるとすればやがて銀行救済につぎ込まなければならない金額は4,000億ユーロ(約40兆円)から5,000億ユーロ(約50兆円)は下らないといわれている。ユーロ圏最大のスポンサー・ドイツがドイツ人の血税からそのような巨額の救済資金を出すことに合意するだろうか。

不動産関連融資の焦げ付きと共に中央政府にとっての問題は地方政府の債務問題だ。スペインの地方自治体は、財政自主権を持っており、それぞれ巨額の債務を抱えている。最大のカタルニア州(同国GDPの20%)が先月財政的に行き詰まり政府に支援を要請したが、最も裕福な自治州までもが財政的破綻に近づいているという事実は、スペインを救うには一体全体どれくらいの資金が必要とされてくるのかという疑問につながる。1992年オリンピックのために作られた巨大なバルセロナ空港があったにもかかわらず、先週久々に訪れたら4-5kmほど離れたところの更に大きな新空港(3年ほど前完成らしい)に着いた。旧空港はLCC(格安便)専用にするというが、地元の人も金の無駄遣いと説明してくれた。この新空港もカタルニア州財政破綻の一因で、大阪市WTC大阪府りんくうゲートタワービル同様不動産バブルの象徴だろう。歴史は繰りかえす。