アミのひとり言

事務所のアイドル犬アミのひとり言です。

名誉総裁を解任された国王

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スペインの国王Juan Carlos I(74才)は今年4月お忍びでアフリカ南部ボツワナに象狩り旅行に出かけた。ボツワナの王族関係者に招待されたとかいうのだが、EU加盟以来最大の経済危機に襲われている最中に、特に若者の失業率が50%を超え、公務員などは10%近くの給与削減を強いられている大変な時に、国王が一人豪遊していいのかと問題になった。(象狩り旅行は3万ユーロ≒300万円ほどかかるといわれる高額レジャー) そして運悪く、彼は狩猟ツアーの際転んで股関節を折り、旅行を切り上げて急遽帰国、Madridの病院で手術を受けたため、国民に象狩り旅行がばれてしまった。

死んだゾウの横でライフルを持って撮った写真なども公表されてしまい、国民の血税で贅沢な旅行と批判されるばかりでなく、そもそも国王として野生動物愛護の精神に欠けると非難された。この人物、実は野生動物保護を掲げる国際的NGO世界自然保護基金(World Wide Fund for Nature = WWF)スペイン支部の名誉総裁だったのだ。しかも国王になる前の1968年(当時30才)からずっと、前身団体であるWWF(当時はWorld Wildlife Fund)の名誉総裁に就任していたというから大いに看板に偽りあり。動物愛護団体は国王入院先のUSP San José病院周囲で4万人の抗議デモを繰り広げ、インターネット上でも国王にWWFスペイン名誉総裁辞任を求める署名をたくさん集めたが、国王は“Lo siento mucho. Me he equivocado y no volverá a ocurrir”(私が間違っていた。二度としません)と国民に謝罪しただけで名誉総裁の座に留まり続けた。

いやしくも国王たる者、謝って済むと思うのが甘かった。7月21日開催されたWWFスペイン総会で94%の圧倒的多数で名誉総裁解任案が支持されついに首になった。スペインは18世紀からブルボン王朝系の国王が統治してきたが、1931年に最後の国王アルフォンソ13世(Alfonso XIII)が国外追放となり、その後共和国、フランコ独裁を経てフランコ死後の1975年にフランコの遺言で王制が復活した。フランコが自分の死後Juan Carlos(Alfonso XIIIの孫)を国王にすると発表したのは1969年、Juan Carlosが31才の時だった。この若者はAlfonso XIIIの四男(Barcelona伯)の長男として父親の亡命先イタリアで生まれたが、そのイタリアからも追われてスペインに戻ってきた。

たまたまフランコに気に入られたから今の自分があるということに感謝すべきところが、そのGodfather亡き後自分がスペインの王様だと勘違いしていたところに間違いの発端がある。国民の方が主権者で、主権者は国王も解任できるのだぞと知らしめた事件だった。スペイン王室の信頼を一気に失墜させる事態となったが、王室の汚れたイメージはJuan Carlosの次女Cristinaの夫Iñaki Urdangarinの贈収賄事件で表面化した。検察特捜部はIñakiが公金500万ユーロ(5億円)以上を流用したとして起訴したのだ。早速、国王は 「Iñakiが私的に行っている活動は王室とは全く無関係。今後、王室の公務に彼は参加させない」 と発表した。CristinaとIñakiは別れるのだろうが、Juan Carlosも心を入れ替えなければ国民と別れることになるかもしれない。祖父の歴史を繰り返すのだろうか。