アミのひとり言

事務所のアイドル犬アミのひとり言です。

国会事故調査報告書

「東電福島原発事故調査委員会法」という特別の法律に基づく報告書が国会・内閣に提出された。国会により任命された9人の有識者が、深刻さの点で原爆投下に匹敵する原発事故の原因究明について、国政調査権に準じた権限を行使して作成したものだ。結論として電力事業者と規制当局が混然一体となって原発を推進し安全基準を作り上げてきたところに問題の核心があったことが判明した。

調査によれば、原発事故の5年前には、既に福島第一原発の敷地高さを超える津波が来た場合に全電源喪失に至り、炉心損傷に至る危険があることは、保安院と東電の間で認識が共有されていた。しかし、その対策に余計な費用がかかるので、東電の入れ知恵により電源喪失の可能性は考えなくてもよいとの報告書を保安院は作成した。無知無能の規制当局に比べて、実際に原発を動かしている東電の方が原子力技術に関する情報量が多く、保安院が規制を作る場合も事業者である東電にお伺いを立てていたという。政府が海賊対策の詳細を決めるのに海賊に相談するようなものだ。

もともと取り締まる側(政府)の内閣府原子力安全委員会経産省原子力安全保安院と規制される側(電気事業者)の東電では、政府が東電の上のはずだが、安全基準を作る際には立場が逆転して、政府はほぼ東電の言いなりになっていたことが立証された。報告書では、規制当局は電気事業者の「虜(=奴隷=言いなり)」となっていたというのだ。保安院の所属する経産省原子力推進官庁であり、東電と一体であっても何ら不思議ではない。それどころか、東電は裏で保安院を自由に操っていた黒幕であると暴露された。要するに海賊を取り締まる海上保安庁は名ばかりだったのだ。

原発事故は自然災害が契機になったとはいえ事故自体は人災であったと断定された。政府・電力事業者が一体となって作った安全神話に基づき、事故発生可能性の科学的根拠は皆無に等しい(巨大隕石が地球に落下するような蓋然性)として東電は全電源喪失対策を先送りし、政府はそれを容認してきたのだ。無知で責任感に乏しい東電に危険極まりない原子力を扱う事業者としての資格はない。広範囲に放出された放射性物質は、何十年、何万年経っても自然には充分に低減せず、深刻な環境汚染問題と汚染土壌の仮置き場確保の問題が国民に残された。事故調には今回の調査の対象外とされた使用済み核燃料処理・処分等に関する提言もできれば検討してほしい。そして有識者メンバーに小出裕章氏のような反原発の理論家を数人加えてもらいたいものだ。