大津地裁は3月9日、関電高浜原発3号機・4号機の運転差止めを命ずる仮処分判決を出した。東電福島第一原発事故を教訓としない関電と原子力規制委員会に対する強力な批判である。あの事故から5年経っても、いまだ避難指示区域からの避難者は、少なくとも約7万人いる。原発事業者は、炉心溶融(Meltdown)の過酷事故と分かっていても発表しないということも証明されている。先月の発表では、東電が事故発生3日後にMeltdownと判断すべき根拠を持っていたにもかかわらず、2か月間それを認めず、5月になってようやくMeltdownと認め公表した。
東電の社内マニュアルでは、炉心(燃料)損傷割合が5%を超えるものをMeltdownと定義しているのに、事故発生3日後の3月14日にセンサーが回復した結果、燃料損傷割合が、1号機55%(翌日70%と発表)、3号機30%になっていることが判明していて、翌15日には、2号機も30%になっていることが判明していたのだ。にもかかわらず、当時の東電発表は「炉心溶融」には至っておらず、単なる「炉心損傷」の事象とか、「燃料ペレットの溶融」などと発表していた。炉心溶融=Meltdownは大変な事故で、それを疑っていた米国などは、自国民を東京から国外避難させていた時期に、東電の虚偽発表により、福島から避難せず被爆した人がたくさん発生した。その結果、福島県内の子どもの甲状腺がん発生率は平常時の70倍以上となっている。文科省が2011年11月25日発表した数値では、同年3-6月のヨウ素の月間降下物総量は、東京新宿で、盛岡の100倍超となっている。東電の情報隠しも常識外だが、我が国の大都市には、多くの子どもたちが住んでいるから、万が一にも事故を起こすような原発を運転してはいけないのだ。
大津地裁判決では、原子力規制委員会の作成する規制基準そのものの安全基準が疑わしいと指摘された。原発推進派学者に判断させて、安全基準も何もあったものではない。安全基準の基準地震動(最大加速度700gal、水平動=横揺れ)も過去何十年かの平均値を基に計算しているが、何の足しにもならない。原子力規制委員会に、基準以上の地震を止める力がないのだから。1500gal(2004.12.14北海道留萌支庁南部地震)とか4022gal(2008.6.14岩手・宮城内陸地震)程度の地震は今後一切発生させないと、科学的根拠に基づき約束できるのでないなら、安易に基準地震動対策が万全だから安全は確保されていると言うべきではないのだ。